アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
66 目には目をの精神で
-
とりあえず、このまま正攻法でアタックを続けたところで何の成果も上がらぬどころか悪影響しかないと判断した。
山田が冷たい。
それはもう絶対零度の凍気を纏う氷の化身と見紛うばかりには、とても冷たい。
このまま押せ押せでアタックしまくって、俺に対して完全に心を閉ざされてしまってからでは、もう本当にどうしようもなくなってしまう。
かといって、これ程までに冷たくなった山田が今までのように俺の体を自ら求めてくるとも思えない。
ジレンマだ。
押してもダメ、引いても………山田は俺を気にするどころか、俺が駆け引きをしている事にすら気付かないのだろうと思う。
「あぁー………どーすっかなぁー」
いよいよ打つ手はないのかと、頭を抱えながら天を仰ぎ体を仰け反らせ、ギシギシと椅子の背凭れを鳴らして無体を強いていたその時だった。
「何々?仕事で失敗でもしたのか?」
能天気にニヤニヤと笑い、話し掛けてきたのは同期入社の長谷川くん。
「うっせ、バーカ」
そう言って、俺は苦虫でも噛み潰したような顔を長谷川に向ける。
この長谷川という男は、人が落ち込んだり悩んでいたり、失敗したりなどの不幸・不運・その他諸々………まあ何と言うか、そんなものをからかうのが無上の喜びであると公言して憚らない鬼畜である。
「なんだよ、違うの?」
「違う。仕事はバッチリ順調、なんの問題もない」
言いながら、俺は言葉の通りバッチリ順調に進んだ書類を手渡してやる。
長谷川は受け取ったその書類にパラパラと目を通す………と、あからさまに不機嫌な表情になった。
予想が外れ、本当に何の問題も無かった事がお気に召さないらしい。
「………ふんっ。つまんなーいの」
俺に興味を失ったらしい長谷川はそう言うとこちらにポイッと無造作に書類を放り投げてすたすたと歩き去って行く。
「チッ………あんの野郎」
小さな声で毒を吐き、はた………と、俺はある事に気がついた。
「は………はは」
まさに天恵………。
思わずニヤリと、ほくそ笑まずにはおられなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
66 / 114