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新幹線で博多まで行き、そこでレンタカーを借りて長崎へ向かう。
長い長い道程。
「………なぁ、ちったぁ先輩に気遣って楽しい会話のひとつもないのか」
「話す事なんて、特にありませんし」
「かぁ~っわいくねぇ!」
「可愛いなんて、思われても迷惑なだけです」
新幹線の中での会話は終始こんな感じで、それは車に乗り換えてからも変わらなかった。
「なんでお前、そんなに俺にツンツンすんの」
「センパイこそ、急に馴れ馴れしくなってどうしたんですか」
………どうしたかなんて、お前を好きだと自覚しただけに過ぎない。
好きだから、構いたい。
好きだから、構われたい。
優しくされたい、笑い掛けられたい、話したい、顔を眺めていたい、触れたい………触れ合いたい、愛されたい。
ピュアなばかりの純情な恋心を語るには、俺は年を取りすぎていて。
肉欲にまみれた欲望をぶつけるだけじゃ、虚しくて。
男同士の不毛な関係。
けれど、諦めるには気持ちが大きく育ち過ぎていて………。
袋小路のジレンマだった。
「………なんでもねぇよ」
大体、俺がコイツの事を好きで口説こうと躍起になってる………なんて、きっとコイツにも解っている筈で。
それを解った上でこの態度なのだとしたら、それはもう………望みはないという事で………。
………考えれば考える程、最悪の結論にしか至らない。
「………はぁ」
溜め息を吐いた、その時だった。
「あ、海………」
「………あ?」
ポツリと呟かれた山田の言葉につられて、窓の外を見てみれば美しい青い海が広がっていた。
「綺麗だな」
「センパイ、車を運転してるんですからちゃんと前を向いて下さい」
「………へーへー、っとに可愛くないヤツ」
キラキラと無邪気に瞳を輝かせて食い入るように窓の外の景色に夢中になっている山田の横顔を見ていたら、さっきまでの最悪な気分も考えも全部あっさりどこかへ消えてなくなった。
こんな、子供みたいな所もあるんだな。
新たな山田の一面に触れ、なんだかもうそれだけで………何を頑張るのかは知らないが………頑張ろうとみなぎってしまうのだから、自分も大概単純な人間なんだなと、呆れてしまう。
「俺、頑張るわ」
「仕事なんですから“頑張る”なんて精神論をほざくよりも、結果を出してナンボです」
「………可愛くない」
「僕が居ますから、失敗する事はないでしょうけどね」
「はは、そりゃ頼もしい」
落ち込んでいた気分が、浮上した。
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