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取引先の会社に着いたのは夕方で、名刺交換と自己紹介もそこそこに飲みに行こうという事になった。
「………ホテルで休みたいのに」
「つべこべ言うなって、わかってた事だろ?それに、旨い魚介類が食べれるぞ」
「魚介類なんて………」
「刺身、嫌いか?海鮮丼とかもあるぞ」
「別にわざわざ長崎まで来て食べる必要はないじゃないですか」
「お前、酒は弱くなかったよな?俺の代わりにしっかり飲めよ」
「………最悪だ」
飲み屋に向かう車中、タクシーに乗って先導する取引先の社員を俺と山田はレンタカーで追う。
「俺は運転があるからな」
ニヤニヤと笑う俺に、
「あちらの言う通り、タクシーに相乗りさせてもらったら良かったじゃないですか」
と山田は唇を尖らせて文句を言う。
「酒が嫌いな訳じゃないだろう?」
俺の言葉に、山田は盛大な溜め息を吐いた。
「酔い潰れているのを良い事に、不埒な真似でもしそうな人物が側に居て楽しい酒なんか飲める訳ないでしょう?それに、これも仕事の範疇じゃないですか」
窓の外の景色を見詰めながら、刺々しい言い方で不服を露にする山田を………そんな所も可愛いなと思ってしまえる辺り、末期だなと自分でも思う。
怒った顔も、不機嫌な物言いも、笑った顔は勿論、照れた顔も、子供の様にキラキラと瞳を輝かせる所も、山田を象るその全てが愛しい。
………我ながら、呆れる。
こんな年下の男に、どうしてこうも骨抜きにされてしまったのか。
「ちゃーんと分かってんじゃねぇか。これも仕事なんだから、たーんと飲めよ。俺はどこぞの淫乱と違って酒で朦朧としてる相手に無理やり………なんて事はしないから安心してな?」
「どうだか………っ」
赤信号。
ブレーキを踏んで車は止まり、先導するタクシーは先へ進む。
「大胆な事をしますね」
「たまにはな」
サイドブレーキをさっと引いて、そのまま山田の首を掴み顔をこちらに向けて唇を奪う。
ほんの一緒の、触れ合い。
「ますます信用ならなくなりました」
「ははは、まあそう言うなって」
山田の頬は微かに………けれども確かにほんのり赤く色づいていた。
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