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「わ………ぁ………」
山田が、ポカーンと間抜けに口を開けて言葉をなくす。
それほどに、圧倒的な美しい光景。
ゴホン、とひとつ咳払い。
「あー、ここ長崎の夜景は世界三大夜景にも選ばれ1000万ドルの夜景としてパノラマの景色がだな」
折角、山田に格好良く知識を披露してやろうと事前に色々と調べていたにも関わらず棒読みでごちゃごちゃになって、
「センパイ、五月蝿い」
なんて言われる始末。
だけど、山田がキラキラと瞳を輝かせて食い入るように夜景を見詰めているから、山田が満足してるならそれで良いやって、自分も視線を夜景に移す。
澄んだ空気、幻想的な夜景、隣には愛しい俺の想い人。
「函館じゃないんですか?世界三大夜景」
夜景からは目を離さず、山田が俺に話し掛けた。
久しぶりの普通の会話。
「ああ、なんかな。何年か前に函館から長崎に変わったらしいぞ。なんか新世界三大夜景って言うらしー」
「………案外、ロマンチックな事しますね。センパイ」
手すりに体重を掛け、前のめりになってこちらを見詰めながら山田はニヤリと笑う。
「おい、あぶねーぞ」
ますます、山田は体重を前に掛ける。
「ふふふ、このまま手すりを離して落っこちたら吸い込まれて夜景とひとつになれるかな」
ニヤニヤと、山田が笑う。
「バカ、酔っ払いがっ!ふざけんな」
肩を掴み、上体を後ろに戻して俺は山田を怒鳴りつけた。
「怒んないでよ。冗談じゃん」
笑っている筈なのに、なんでだろう。
山田の目尻には確かに涙が滲んでいた。
好き。
好きだと思った。
もう、堪らなく大好き。
愛してる………なんて、こっぱずかしくて今まで誰にも言った事はない。
なのになんでだろう。
コイツには、言えてしまうんだよな。
「明楽、好き。すげー好き。もうめちゃめちゃ好き、大好き。愛してる………ねぇ、付き合ってよ。側に居て」
格好良く決めるつもりだっのに、なんでこんなに女々しくなっちまったんだろう。
………本当は、こんな事言うつもりなかったのに。
1000万ドルのパノラマの夜景、幻想的な光の芸術。
ちょっと、浮かれちまったんだと思う。
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