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案の定、山田は先に待ち合わせ場所のロビーに居て、ホテルの人に頼んで手配してもらっていたタクシーも到着していた。
「あと1分遅かったら遅刻でしたよ」
つんけんとした山田の声に、
「バカ野郎。後輩の分際で生意気、言うな」
と返して、さっさとタクシーに乗り込む。
山田がドライバーに行先を告げて、車内での会話も、全て山田に任せた。
目的地に辿り着くと料金は俺が支払い、領収書を貰う。
「あっ、待って下さいよ」
タクシーを降りると、すぐ脇で待ってくれていた山田に見向きもせずに、すたすたと居酒屋の中へ入った。
こんな風に無視して冷たくしたい訳じゃないのに、どうしても………避けてしまう。
気を抜いているとつい、いつもの癖で無意識に山田の顔を見詰めそうになり、慌てて止める。
「………はぁ」
自己嫌悪に苛まれ、気分はどんどん暗く沈んでいく。
ぐるぐると様々な考えが頭を巡り………不意に聞こえた大きな笑い声にハッとした。
何をやっているんだろう。
ここは長崎、今、自分は居酒屋で大事な取引先の会社の人間と飲みに来ているのだ。
仕事じゃないか。
私情を挟んでセンチメンタルに浸っている場合じゃない。
愛想笑いを顔面に張り付け、俺は気を取り直し接待に集中する事にした。
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