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93 出張も終わり
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心地好い微睡みの中、耳に届くのは愛しい人の………
「センパイ、邪魔です」
可愛くない声。
「んぁ………山田?」
ボーッと寝惚けた頭で状況を把握しようと努めつつ、ゴシゴシと豪快に瞼を擦る。
「早く自分の部屋に戻って、帰る支度をして下さい」
山田は有無を言わさず布団を剥ぎ取り、俺に洋服を投げつけてきた。
「さっさとして下さい。早く」
急かす山田に俺は慌ててパンツを履いて、考える間も無くわたわたとワイシャツに袖を通す。
そうしてひとまずズボンを上まであげた所で上着と部屋の鍵を胸に押し付けられ、背中を押されて無理やり表に出された。
「じゃ、後で」
山田はニコリともせず、無情にも目の前でバタンと扉が閉められる。
「ちょっと、山田さ~ん………はぁ」
情けない声を出して、立ち尽くす。
「あーあ、靴のかかと踏んじまってるよ」
意気消沈、肩を落として自分の部屋に戻る。
昨夜、帰らなかったせいで荷物がそこかしこに広がったままだった。
時刻は朝の7時。
8時には取引先の会社に出向き最後にもう一度、挨拶をしておかなければならない。
確かに急いで帰る準備をしなければ。
まずは着替え。
パンツから何から新しいものに取り替えて、歯磨きに洗顔、髭を剃ったら社会人らしく髪をきちんと撫で付ける。
それからバッグに荷物をまとめ、忘れ物はないかと部屋を見渡す。
「あっ、冷蔵庫」
買ったものの飲む機会を逃していたペットボトルもバッグに詰めて、もう一度部屋を見渡した。
「うっし、もう大丈夫かな?」
首を傾げ、指差し確認。
忘れ物はないだろう。
時刻は7時25分を回ったところ。
特に待ち合わせの時刻は決めていなかったのだけれど、山田はもうロビーで待っているだろうか。
あんまり待たせたら、またグチグチ言われるに違いない。
部屋を出ると俺は荷物を抱え急ぎ足でロビーへ向かった。
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