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本当はこのまま山田を家まで送り、あわよくば………なんて、甘い事を考えていた。
けれど、現実はそう易しくない。
荷物は多いし、明日も朝から仕事が待っていて家のパソコンに送られているであろう出張中の仕事のアレコレにも目を通しておかなければならない。
「気を付けて、真っ直ぐ家に帰れよ」
言外に、他の男と遊ぶなよというニュアンスを含ませてタクシーに乗り込む山田にそう声を掛ける。
ヒラヒラと手を振る俺に、山田は目を細めた鋭い視線しかくれない。
なんとなく、そのタクシーが見えなくなるまで見送った。
それから漸く自分もタクシーを拾い、家に帰る。
家を空けたのはほんの僅かの筈なのに、部屋に入るとなんだか酷く懐かしい気持ちに襲われた。
夜中近かったけれど、構わず溜まった洗濯物を洗い窓を開けて換気をする。
軽くシャワーを浴びてビールを手に取り、しばらく迷ったのち、再びそれを冷蔵庫に戻す。
今飲んでしまうと、そのまま何もせずに寝てしまいそうだった。
案の定パソコンを開くと何通かメールが来ていて、目を通していたら洗濯機が仕事を終えた事を知らせてくれた。
パソコンをそのままに、忘れない内に洗濯物をベランダに干して、そうしたらなんだかどっと気が抜けて、長距離の移動の疲れも手伝い、体が急に重くなる。
なんとかパソコンの電源を落とし、目覚ましをセットして目を瞑ると文字通り泥のように眠った。
夢も見ない、深い眠り。
明日から、忙しくなる。
居ない間に溜まったであろう山積みの通常業務に、今回の出張の報告書類の作成、出張先の会社にもまた挨拶と契約内容の調整と、それから山田の事も口説かなきゃいけない。
そりゃあもう大変だ。
けれど、今だけは。
暫しの安息。
ぐっすり休んで、何も考えない。
明日から、頑張る。
朝、起きたらちゃんと頑張るから、だから、今だけは………。
深い深い眠り、夢も見ない。
そして、朝はすぐに訪れる。
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