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心地好く酔っぱらっていたというのに、すっかり覚めてしまった。
「………センパイ、どこまで着いて来るんです?」
タクシーを降りて、ここは山田のマンションの前。
「今日はお前の家に泊まる」
そう言うと、あからさまに嫌な顔をされる。
「酔っぱらいって、タチが悪いですよね」
可愛くない台詞は、もういつもの事だから気にはしない。
「トイレ行ってる隙に間男と消えるどこぞの淫乱よりゃマシだ」
ピクリと、山田の肩が揺れ………振り向いたその顔は傷付いた小動物のよう。
「あれは………そういうんじゃなくて、それに、僕はあなたのモノでもない。間男って表現もおかしいです」
そんな主張は鼻で笑って一蹴する。
そんな事、知ったこっちゃない。
俺にとっては目の前で起こった出来事、それだけが全てだ。
コイツは俺がトイレに行ってた間に、他の男と消えた。
それだけで、充分だった。
「良いから、早く部屋に上げろよ。外で痴話喧嘩なんて、みっともねーだろ」
「なっ、ち………痴話喧嘩って………」
「さっさとしろよ」
ドMという性癖が幸いしてか、強く命令するように言うと従順になる。
オートロックを解除して、マンションのエントランスを抜け、エレベーターの中へ。
気分がどんどん黒く塗り潰されていくようだ。
コイツは、強く言えばこんなに簡単に言う通りにしやがる。
それはつまり………。
「はっ………命令されれば、お前は誰にだってシッポを振って悦んで足を開くんだろうな」
本当は優しくしたいのに、こんな言葉しか出ないのは俺の器が小さいからだ。
分かってたのに、コイツがこんな奴だって………分かってて、好きになった。
けれど、それでも嫉妬しちまうんだから仕方ない。
仕方ないのだけれど………。
「………悪い。ただの八つ当たりだから」
山田の俺を責めるような視線が、居たたまれなさを助長させた。
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