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自己紹介 -1-
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気が付いたら、すっかり遅い時間になっていた。
俺は裸のままベッドで寝ていて、興本は私服姿でソファに座って煙草を吸っていた。
もぞもぞと動く気配を感じたのか、興本が振り返る。
「あ、起きた?」
「うん…今、何時?」
辺りを見回しても時計らしいものはなくて、俺の荷物はベッドから離れたテーブルの上に置かれていた。
「9時過ぎ。お前の携帯で、お袋さんに連絡入れといたから」
そう言って興本は、ぽんと俺に向かって制服を放り投げてきた。
「ん、ありがと」
ベッドの上で制服を着て、ソファに座る興本の横に移る。
俺が隣に座ると、たばこを口に咥えたまま、興本が俺の腰を抱いてきた。
興本の胸に凭れれかかれば、頭を撫でられて良い気持になる。
しばらくお互い無言のままのんびりしていると、前触れもなくがちゃりと扉の開く音がした。
「おっすー!」
「ヤってるー?」
「たくまぁ、会いにきたよ!」
賑やかな声に興本の胸から体を起こして、扉の方を向く。
入って来たのは同じ年くらいの男二人と女の子一人で、男は見るからに遊んでますって感じの金髪と赤茶髪のヤンキーだった。女の子はメイクバッチリのギャルっぽい子で、けれどその顔は普通に可愛かった。
「あれ、誰、その子?」
女の子が俺に気付いて指をさす。
興本は俺の腰を抱いたままの腕に力を入れ、少し離れていた距離をぐっと縮めた。
俺は3人が来る前と同じように興本の胸に納まってしまった。
「井瀬。俺のオモチャだから、手付けんなよ」
そう言って、たばこを口から離すと、俺の額に唇を寄せる。
3人は驚いた顔をしていたが、嫌悪感は見せず、「そうなんだー」と納得した様子でもあった。
興本が男女問わずモテるのは昔からで、節操がないのも昔からだ。おそらく3人も、そんな興本に慣れているのだろう。
「オレは渡合(わたらい)、よろしくねえ」
最初に名乗ってくれたのは金髪ヤンキーだった。人懐こい笑顔で、なんだか犬っぽい。
「俺が十河(とうごう)で、こっちがサリナ」
「よろしくね、井瀬くん?」
「どうも…」
3人が自己紹介してくれている間も興本は俺の頭にキスをしたり、腰を撫でてきたりと、俺は落ち着かなかった。
「店長が、興本が男を連れ込んでるって言うから来てみたんだけどさー、もう終わっちゃった感じ?」
ソファの後ろから渡合が俺を覗き込んで聞いてきた。
連れ込んでるって聞いたから、入って来たって…。最中だったらどうしていたというのか。
意味がよく分からなくて、俺は渡合から興本へと視線を移した。
俺の視線を受けた興本は、興味なさそうにたばこを一口吸い、灰皿へと押し付けて火を消した。
「俺らもう帰るから、お前らは好きにすれば?」
「えー、匠真帰っちゃうの? サリナ、今日会えるの楽しみにしてたのにぃ」
俺とは反対隣に腰を下ろしたサリナさんが、興本に抱き着いて拗ねた顔をする。
間近で見ても可愛いサリナさんだったが、興本は目もくれず、俺の腰から手を離して立ち上がってしまった。
「こいつ真面目ちゃんだからね、お前らと違って」
口実だけに使われた俺の頭を撫でながら、興本は答えた。
「そういえば井瀬くんの制服、第一のだ。頭イイんだねー」
制服の胸ポケットについてる校章を見て、渡合が気づいたらしい。第一高校、というのが俺の通う学校だ。
「皆は興本と一緒の高校?」
「そうそう。オレと興本が同いで、十河が一個上ね」
「ダブってるから学年は一緒だけどな」
「サリナは違うよぉ。サリナはね、華高だから」
華高は私立の女子高で、付属の中学から大学まである一貫校だ。
お嬢様なイメージの学校だったから、意外すぎて驚いた。
「あはは、井瀬くんびっくりしてるー! ウケる!」
渡合が爆笑の中、興本は帰る準備を終えたらしく、俺の腕を掴んで無理矢理立たせた。
「じゃあ、また明日な」
またねーと手を振る3人に、俺は会釈をするしかできなくて、興本に手を引かれたまま店を出た。
そのあとは二人乗りでバイクに乗り、運良く補導もされずに家へと着いた。
その間興本はずっと無言で。
それがなんだか気まずくて、俺はずっと興本の背中に顔を埋めていた。
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