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自己紹介 -2-
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あれから日を空けて、再び店へと連れてこられたのは、週末の放課後だった。
今度はベッドのある横の部屋ではなくて、最初に入ったお店の方へと案内された。
やっぱり営業時間には早いみたいだったけど、店長さんは何事もないようにお茶を出してくれた。
興本にはお茶と、灰皿が出されていた。
お酒はダメなのに、たばこは良いんだろうか。
不思議に思っていると、その視線に気付いたらしい興本が、俺が声に出して問う前に答えてくれた。
「俺に煙草教えたのこの人だから。その手前、ダメだとは言えないんだろ」
「そうなんだ…、いつからの知り合い?」
俺と興本が知り合ったのは今から3年前の、中学3年の時だ。
それから約3年、興本と一緒にいるけどこの店のことは知らなかった。
というか、興本の交友関係とか人間関係とか、実はあまりよく知らない。
それは俺にも言えることかもしれないけど、興本の場合はどこか聞けない雰囲気で。
興本は俺の家族とか友達のことは知っているけど、俺は興本の家族構成や、どこに住んでいるのかも明確には教えてもらったことはない。
「んー、いつからだっけなぁ。中2、とか?」
「中2から、煙草?」
「いや、煙草は高校入ってからだな。興味あったから、どんな感じかと思って」
「へぇ」
「井瀬は吸うなよ」
ふと正面を向いていた興本が俺の方へと顔を向けて言った。
「え、なんで?」
煙草には興味なかったけど、興本がよく吸うのを見ているから、興味があると思われたのかもしれない。
それにしても、自分は良くて俺はダメなのはどうしてだろうか。
小首を傾げて尋ねてみれば、興本は小さく口を弧にして笑った。
「井瀬の口から煙草の臭いしたら、萎えてキスもできねぇ」
そう言った後にキスをされた。
もう…、なんか…。
顔を赤くするしかないよね。
「…俺は、吸わないよ」
「ん、良い子」
興本は俺の頭をひと撫でして、再び顔を正面に向ける。
それから開店の準備を始めた店長さんをぼんやり見つつ、興本と並んで静かな時間を過ごした。
「こんちわー!」
「ちわー!」
店長さんが店を開けてからすぐに、渡合と十河がやって来た。
相変わらず派手な見た目の二人は賑やかで、なんとなく店の雰囲気も明るくなった気がする。
「あ、井瀬くんだー!」
「こんにちは」
俺を見つけた渡合がにこやかな笑顔で手を振ってきたので、俺も小さく挨拶する。
渡合はカウンター席に座る俺の横に座り、十河は興本の隣に座ったようだ。
俺と興本を中心に、四人が並ぶ。
店長さんは注文も聞かずに、俺と興本にはお茶のお代わりと、渡合と十河にはコーラを出してきた。
「井瀬くんってあんまり興本の周りにはいないタイプだから面白いけど、井瀬くんと興本ってどういう関係なの?」
コーラを飲んだ渡合が聞いてきたので、俺は素直に「友達だよ」と答えた。
「それ俺も気になってたんだよな。中学が一緒だったとか?」
十河も興本越しに聞いてきた。興本は答える気はないみたいで、ただ煙草を吹かしている。
「えと…塾が、一緒で。学校は、別々だった」
俺が答えていいのかな、と不安になりながらも、興本の表情は変わらないので、大丈夫なようだ。
「え、興本、塾行ってたの?」
十河と渡合が食いついたのはそこで、塾に行って勉強している興本を想像したのか、次の瞬間は大笑いしていた。
「あははは! まじで! ウケる!」
「行った意味なかったなぁ!」
「うっせー」
笑われて不快そうに顔を歪める興本を見つめながら、俺も当時のことを少しだけ思い出した。
確かに当時も、興本は塾に来て勉強を真面目にやるようなタイプには見えなかった。
だから塾では目立っていたし、塾でのクラスは違ったけど、俺も興本のことを認識していた。
志望校別にクラス分けされるので、興本の成績もなんとなくは分かっていた。
俺としてはむしろ、今の学校を選んだということの方が意外だったのだけれど。
「んで? ただの友達じゃないよね?」
昔のことを思い出して懐かしんでいたら、急に渡合がぶっこんできた。
驚いて横を見れば、コテンと首を傾げて、人懐こい笑みを浮かべる渡合がいた。
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