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自己紹介 -3-
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例えば糸田と俺のような関係かと言えば、俺と興本との関係はただの友達とは言えない。
けれど知人と言うには関係が深すぎて、親友と言えるほど親密ではないと思う。
答えに困っていれば、更に十河が重ねて言ってきた。
「俺ら偏見ないし、恋人って言われても驚かないけど?」
「まー、興本に本命がいたっていうことにはびっくりだけどねー!」
二人にとっては性別は問題ないようだ。
それが分かったところで、俺の困惑が解消されるはずもないのだけれど。
「えーと…」
言葉に窮していると、ふう、と隣で興本が大きく息を吐く。
「関係なんてどーでもいいだろ。こいつは俺の。それ以上でも以下でもねーの」
「えぇ! 意味不! それ超意味不です、興本氏!」
断固抗議、と渡合が捲し立てる。
「お前の言葉遣いが意味不明だわ」
興本が鼻で笑って、さらに渡合が腹を立てる、を2,3回繰り返した。
仲良いんだなぁ、と二人のやり取りを見て関係ないことを思った。
「知ってる、井瀬くん? 興本ね、うちの学年の女子、ほとんど食ってるんだよー。でも彼女が一人もいないの。これどう思う?」
まるで興本に聞こえるように、それでも完全に陰口の乗りで、渡合が不機嫌なまま俺に言ってきた。
興本に節操がないのも、手が早いのも、俺が知り合った時から何度となく噂で聞いて知っていた。
だから今更、というのもあるのだが、少なからずいい気分はしなかった。
それは男として羨ましいのか、女の子の方に嫉妬しているのか、判断しにくいところではあるけども。
「昔からモテるからね、興本は…」
だから俺に言えるのはそれくらいで。
「顔? 顔なの? 結局皆顔に騙されてるんだよー! ずるい!!」
「なに、結局渡合がモテないって話なわけ?」
うわーん! とテーブルに伏せる渡合に、十河が呆れた顔をする。
「そういやこの前フラれたって言ってたな。ドンマイ」
そしてまた興本は馬鹿にしたように笑った。
「でも渡合もイケメンなのに」
チャラいけど。できれば俺としては近づきたくないほどヤンキーだけど。
オシャレには気を遣ってそうだし、顔立ちも興本ほどではないけどそこそこのイケメンだし。
俺と比べたら全然モテてそうなのに、と言えば、犬のような笑みを向けて体を起こした。
「井瀬くん優しい! 良い子! 好き!」
いきなりの好意を向けられて、驚きを隠せない。
感情の表現がストレートすぎて、もう本当に犬にしか見えなくなった。
「ばか。だから俺のだっつっただろ」
両手を広げて俺に抱き着こうとしたらしい渡合から避けるように、俺の体を腕一本で引き寄せた興本が冷たい声音を吐く。
「ばかだなー、渡合。興本に牽制されてんじゃん」
十河からも笑われて、明らかに落ち込む渡合は、広げた両手を下ろした。
「なんだよ二人とも! 少しくらいは慰めてくれてもいいじゃんか!」
「散々昼間慰めてやっただろー? 昼飯奢って話聞いて、それで十分だろうがよ」
「それともあれか。渡合もカラダで慰めてほしいんだ?」
平然と言う十河のあとに、からかうような口調で興本はそんなふうに言うと、見せつけるように俺の顔を指だけで興本の方へ向かせると、そのまま口を重ねてきた。
舌は入ってこなかったけれど、唇を咥えて、わざとらしくリップ音を立てる。
「うぜぇ! 興本、うぜー! オレはお前らと違って女の子がイイから!」
「そうだな。興本と渡合だったら、完全に渡合が掘られる方だしな」
「十河もうぜぇ!」
吠える渡合とからかう二人を、興本の腕の中で見ていた俺は、なんとなく学校での3人を想像して、どこか微笑ましくなった。
だから、ついさっき面前でキスをされたことも、すっかり忘れられた。
それから店長さんが再びお茶のお代わりを入れてくれるまで、ずっと俺は興本に抱き寄せられたままで、それに気づいた渡合に今度は俺がからかわれることになってしまうのだった。
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