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デート -2-
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二人で出かけるという両親に合わせて、早めの時間に俺たちも家を出た。
朝ごはんは食べたから、とりあえずどこかに行こうという話になったのだが、どこへ行きたいかと聞かれたところで俺の頭には何も浮かんでこなかった。
「えーと…」
玄関の前で突っ立ったまま頭を悩ませる俺に、興本は持ってきたバイクの鍵をカチャカチャと音を立てて手の中で遊ぶ。
「海か、山か、街。どれか選べ」
中々提案ができないでいると、助けるように興本が選択肢を与えてくれた。
興本自身も希望がないのだから、結局は俺に決めさせている時点で人任せなのだが、ヒントをくれるような言動に俺は少し助かった。
海も山も行こうと思えば日帰りで行ける距離ではある。興本が買い物をしたいと言っていたのを考えれば街を選ぶのも簡単だ。映画をみたりゲーセンに行くのも良いかもしれない。そういう普通の友人とするような遊びを、そういえば興本と二人でした思い出はないと思う。
ぐるぐると考えを巡らせては一人で悩み、結局ちらりと興本へ視線を送った。
「興本は買い物したいんだよな…?」
「別に、そこまで行きたいわけじゃない。井瀬は何して遊びたいとかないの?」
「うーん…」
優柔不断と言われればそれまでだ。
基本的に人から指示されたことに対して、よほど納得がいかないことでなければ、ある程度は自分の中で勝手に納得できる要素を見つけ出しては素直に従うことができるし、そんな自分に抵抗感もない。
良い様に言えば順応性だったり適応力といった類の能力が高いとも取れるが、悪く言えば自己主張がないし、決断力に欠けている。これまでの学生生活においてことごとく評価されてきたし、自覚はあるのだ。
だから段々とそんな俺に興本が苛立ってきているのも分かっていたし、だから何とかアイデアはないかと思案しているのだけれど、俺の出来の悪い頭は真っ白のままなのだった。
「じゃあ全部周るか」
埒が明かない、と諦めたように興本が言い捨てた。
「乗って。メットはちゃんと被れよ」
かちゃかちゃと遊んでいた鍵を手元に収め、バイクのエンジンをかける。
ヘルメットを俺に被せ、俺がわたわたとベルトを締めている間に、自分もヘルメットを被っていた。
バイクに乗るときに、沿岸側を走りながら森林公園へ向かい、街に戻って夜ご飯を食べるという流れを興本に説明された。
テキパキと今日の予定を立てていく興本に俺は尊敬のまなざしを向ける。
残念ながら興本は背中を向けたままで俺からの視線は受け取られなかったが、ぐっと腰に手を回し、抱き着くように乗った俺に、一瞬だけ興本は顔をこちらへ向けてくれた。
「高速は乗らないから走りっぱなしになる。何かあったら叩いて知らせろよ。声だけじゃ気づけないと思う」
「分かった」
下道だけで行くのならばまる一日かかるだろうコースに、俺は気合を入れて頷いた。
走り出したバイクに乗って頬を背中にくっつける。
昼ご飯は途中でどこかにでも寄るんだろう。
こんなにも長く興本と一緒にいれることなんて今まで一度もなくて、俺は柄にもなく嬉しくなった。
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