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期末テスト -1-
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翌日の教室で、糸田との話題はやはり、ファミレスで偶然会ったことに尽きた。
「あの後井瀬の友達見たけどさ、何あれ。めっちゃイケメンだったんだけど」
どうやら興本と座って食べてるところを見られていたらしい。何か恥ずかしいことをしていなかったと少し不安になった。
二人きりだと俺と興本は結構距離が近いという自覚はあった。
「ああ、うん。イケメンだなとは俺もずっと思ってる」
「あんま井瀬と接点なさそうだったけど、付き合い長いの?」
興味津々という感じを隠さずに聞いてくる糸田は、なんとなく渡合の人懐こさを思い起こさせた。
「確かに普通だったら近寄ったりしないタイプだとは思うけど」
外見だけで言えば興本はクラスの中心人物に自然となるタイプの人間で、俺はその他大勢という位置にいるモブタイプだ。糸田の言わんとしていることは分かるので素直に同意した。
「中学からだから、結構続いていると思う」
なんだかんだと言いつつここまで関係を続けてこられているのは、まだ興本が俺に飽きていないだけで、たぶんその内興本からの連絡が無くなれば、そのまま消えてしまうくらいもろい関係だということも俺は分かっていた。
「そうなんだ。いやテレビでもあんま見ないイケメンだったからさ、一人でテンション上がっちゃった」
「分かる分かる。男から見ても文句ないよな、あれは」
本人がいないのにその外見を手放しで褒められるって…どれほどのイケメン具合かと呆れるくらい、やっぱり興本は誰が見てもカッコイイのだ。
だから女の子なんて誰も放っておかないだろうし、同性から見ても気になる存在であることには間違いない。
そんな興本にあの目立つキスマークを付けたことを、一晩経った今でも俺はやり過ぎだったのではと反省せざるを得ないままだった。
いや、誰も俺が付けたとは思わないだろうし、逆に勘付かれても困るのだけれど…。
独占欲を持ってはいけないと、俺自身が思っているのかもしれない。興本に対してそんな感情を抱いてはいけないと…。
昨日はそれが抑えられなくて思わず強請ってしまっただけで。
そしてなぜか興本が俺の小さな独占欲を煽っただけで。
「それよりさ、今日から部活ないんだ。放課後どっか寄って行かないか?」
俺が思考を彼方へ飛ばしているうちに会話は試験期間の話題になっていたようだ。
確かに来週から期末試験が始まり、その一週間前である今日からは全部活動が停止期間に入る。
俺たちが通う高校は勉学にも力を入れているので、補習、補講も自由参加でいくつか案内されていた。
「今日は地学の補講に行こうと思ってたんだけど、糸田も行くのか?」
地学は選択科目で、また受験科目でもないからそれほど力を入れて勉強する生徒はいなのだけれど、俺は単純に苦手科目なので補講科目に入れていた。
「あー、補講は俺数学にしたからさ。そのあと、どっかで食べながら一緒に勉強したいなって」
どうやら俺の放課後と糸田の言う放課後には食い違いがあったようだ。俺は少し恥ずかしくなりながらも、ああ、と慌てて頷いた。
「そういうことか。うん、うん! どっか寄って行こう!」
「こいうのも初めてだよな。遅くなっても大丈夫か?」
「うち、親も遅いから、そこら辺は緩いんだ。女の子でもないし、門限はないよ」
「俺も部活あるから時間には煩くないんだよね。良かった。じゃあ、また後でな」
区切りの良い所でチャイムが鳴る時間になり、糸田は自分の席へと戻っていった。
久しぶりに興本と以外で学校帰りに寄り道をすることになり、密かに放課後を楽しみにしていた。
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