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期末テスト -3-
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「あー! ほんとに井瀬くんだー!」
入って来るなり賑やかな声を上げたのは渡合だった。
続いて十河、興本が姿を見せた。
迷わず俺と糸田の席にやって来たチャラ男とヤンキーとイケメンに、店員のお姉さんはニコニコと笑みを浮かべながらも戸惑った様子で窺っているのが見て取れる。
「何々、お勉強中? まじめー」
何が可笑しいのか分からないが渡合は楽しそうに笑いながら俺たちの手元を覗き込んできた。
「もうすぐテストだし。渡合達は?」
「知らね。そういやそんなことも言ってたかなー」
「言ってた言ってた。流石にそれはマズイぞ、渡合」
十河が渡合に突っ込みながら隣の席に腰を下ろした。興本も俺の隣の椅子に腰を下ろした。
とりあえず注文をすべく十河が呼び鈴を鳴らし、興本と十河はドリンクバーと、渡合はチーズハンバーグとコーンスープのCセットを頼んだ。渡合だけはがっつり食う気なようだ。
「あの、それより、誰…?」
わいわいと漫才の様に掛け合いを見せている渡合と十河を指さし、糸田がこっそりと尋ねてきた。
当然の質問だと思う。
「あっ、井瀬くんのお友達? オレ渡合。よろしくねー!」
目ざとく渡合が糸田に気付き、にっこりと笑顔を見せて名乗った。
糸田は気づかれたことに驚いたようだったが、すぐに「俺は糸田。よろしくー」と持ち前の人当たりの良さで渡合に答えていた。
どちらも人見知りをしないのか、俺が思っていたよりもずっと和やかな雰囲気だ。
「それより井瀬、課題早くやっちゃえよ」
興本がおもむろに肩に腕を回して耳に息を吹きかけてきた。無駄にエロイ興本の雰囲気に俺は糸田の視線を気にしてどぎまぎする。なんだか、不良に絡まれてるようにしか思えない。
「ちょ、近い! 近い!」
肩を抱かれて課題ができるわけないだろう、と興本の体を離そうと突っぱねるが、興本は不服そうにするだけだった。
「えー? 俺らいつもこんなんじゃん。トモダチの前だから恥ずかしがってんの? かわいー」
さりげなく耳を舐められて腰にきた。糸田が不審な目で見ている、気がする…。
「興本ー、井瀬くん困ってるみたいだから、大人しくしときなよ」
まさかの渡合から軽く注意を受けた興本は、けれどお構いなしに俺の腕を撫でながら、今度は腰を抱いてきた。
「井瀬くん、さっさと課題終わらせて興本構ってあげないと」
そして俺はなぜか十河に注意をされて、腰を抱かれたまま課題を済ませることになった。
確かに十河の言うことは尤もで、これ以上変に絡まれても糸田におかしな目で見られるだけだと思った。今も不思議そうに俺と興本を見ている。
「仲良いんだなー。仲良さそうには見えないけど」
糸田のその言葉に反応したのは渡合だった。
「ねー。興本、井瀬くんのこと大好きだからね、まじウケる」
今日は俺たちと遊んでたのにさー、と少し不満げに言う渡合によると、カラオケでもゲーセンでもつまらなさそうにしていた興本が、俺とのメールでさっさとファミレスに向かおうとするから何事かと思ったそうだ。
そんな風に聞かされると勘違いするから、やめてほしいんだけどな。
本当に興本は俺のこと、好きなんじゃないかって…。
「あ、井瀬、そこの地層、名前間違ってる」
肘をつきながら俺の手元を眺めていた興本が、ふと指をさして指摘してきた。
教科書を開いて見比べてみれば、確かに一層ずれて書き込んでいた。
「え、ほんとだ。ありがと…」
さすが興本だなーと俺は素直に感心したのだけれど、渡合と十河には意外すぎたようだ。
「なに、なに、興本が井瀬くんに勉強教えてる!?」
「実は興本って頭良いの?」
「たまたまだって」
興本は何でもないように俺の髪を弄ったりしてじゃれついてくるが、俺は気にせずせっせと課題のプリントに書き込んでいく。
たまたまなんかじゃないことは、俺がよく分かっていた。
でも興本が鼻にもかけない態度を貫いているので、俺から言うことではないのだ。
「えー。今度オレにも勉強教えてくれよー」
「やだよ、めんどくさい」
「というか渡合に勉強する気があるのか」
「十河、オレを馬鹿にしているぞ、その発言は!」
「いやだって、お前バカじゃん。俺中間で10点とか初めて見たわ」
「わー! それは俺の黒歴史! 十河のばか!!」
「10点…」
「わーん! 井瀬くんのお友達に引かれてるー! 十河の大ばか!」
「渡合煩い。井瀬が集中できねーだろが」
興本が冷めた目で渡合に視線を飛ばし、渡合はしゅん、と怒られた犬みたいに大人しくなった。
俺の頭を撫でる興本に、十河が呆れた顔をした。
「なにその井瀬くん至上主義な発言。まじで好きすぎじゃね?」
恥ずかしすぎて俺は何も言えない。いや、嬉しいけど。
そして興本は十河のそれには無視して、俺の頭を撫で続けていた。
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