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期末テスト -4-
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今日の興本はいつも以上にべたべたと触れてくる。何事かと思うくらいに、構ってくる。
こんな興本は初めてで、嬉しいと思いつつも戸惑っていたのも本当だ。
いや、初めてではなかったか…。
そういえば初めて体を重ねたときも、こんなふうに甘えてきていたかもしれない。
その時俺はどう思ったっけ。可愛いなって。俺が守ってやらなきゃって。見当違いなことを思った気がする。
今はこんなにも怖いだけだった。
「井瀬、ちょっと来て」
ある程度課題のプリントも終わったところで興本に呼ばれて席を立った。
向かった先はトイレだった。
狭い個室に二人で入った。俺に至っては押し込まれた感じが否めないが、扉を背にして興本が立つ。
「はー。あいつらまじうぜー」
鍵を締めた興本は正面から俺に抱き着いてきた。肩に顔を埋めて長い溜息をついた。
俺も興本の肩に頬を摺り寄せて背中に腕を回した。
慰めるように興本の頭を撫でれば、振り払う素振りも見せずに大人しく撫でさせてくれる。
「…良い友達だと思うけど」
興本の口から渡合達のことを悪く言ってほしくなかった。それはたぶん興本も分かっていたんだろう。俺の言葉を否定することは言ってこなかった。
「……井瀬とあいつは仲良いね」
「糸田?」
興本が俺の交友関係に関心を示してきたことが意外で、思わず興本の顔を覗き込もうとしたけれど、完全に俺の肩に埋めてしまっていて興本の表情を見ることは叶わなかった。
「クラスも同じだし、一緒にいることは多いから…」
糸田は俺にとって高校での数少ない友人の一人だ。今のところ一番仲がいいと思っている。
「もしかして、妬いてる…?」
まさか、と思って聞いてみたが、特に反応もなかったのでただの自惚れだと知る。
顔を上げた興本はいつもと変わらずイケメンで、目を細めて悪戯っぽく笑った。
「そういえば井瀬が付けたコレ、効果抜群だったよ」
ココ、と指さしたのは俺が付けた首元の赤い痕だ。昨日の今日で記憶は新しく、思わず顔を赤くしてしまった。
「今から新しいの、もう一個付けて」
「え…っ?」
「今週からテスト期間だろ。あんま会えなくなるから、ここにもう一個付けて」
俺がテスト期間には勉強に集中したいことを知っている興本は、そう言って今付いている痕のすぐ下の箇所を指した。
そこはタートルネックを着ない限りどう見ても服で隠れる場所ではなかったから、俺は戸惑うしかない。
「二つもつけてたら、さすがに趣味を疑われるよ?」
どれだけ独占欲の強い彼女なのかと。そんな女を選ぶ興本の趣味を疑われるのは目に見えている。
俺のことはどう思われても良いけれど、興本のことを悪く思われるのは嫌だった。
「別に他人にどう思われてもどうでもいいし。ていうか、井瀬に拒否権なんてないだろ?」
人差し指一本で顎を上げられて、視線を合わせられる。覗きこまれた瞳に俺はうっかり見惚れてしまった。
そうだった。俺は興本の言うことには逆らえないんだった。
「うん…」
俺は一つ頷いて、自ら興本の首筋に顔を寄せた。
「…ッ」
強く吸い付いて、口を離したら、薄い赤の痕が浮き上がっていた。
「できた?」
「うん、できた」
鏡がないので興本はその場で確かめられなかったが、俺が頷いたのを見て満足そうに口角を上げた。
ご褒美、と言って興本がくれたのは優しいキスだった。唇を啄むだけの軽いキスだ。
すぐに物足りなくなって口を開くけれど中々欲しいものはくれない。
「んぅ…、興本…っ」
強請るように舌を覘かせれば、興本は小さく笑った。
「これ以上はダメ。続きはテスト終わってからな」
意地悪く言って、興本は本当に体ごと離れてしまった。
不満げに見上げるが、興本は俺の頭を撫でて鍵を開けた。
「可愛い顔してもダメだよ。ほら、戻るぞ」
不機嫌な興本はすっかり消えて、代わりに俺の欲求不満が溜まっていく。
それでも興本がダメと言うからには、あと2週間は連絡もくれなくなるのだろうと思えば、文句は言えなくても表情に出てしまうのは仕方なかった。
そして席に戻って渡合達に不機嫌を指摘されるものの、上手く応えられなかったのは言うまでもなかった。
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