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期末テスト -8-
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「だから、ここの数字が移行するだろ」
「あー、なるほどね! 糸田の説明分かりやすい!」
「え、待って。俺まだ分かってない。なんでYがこっちになんの?」
「渡合おまえー、さっき糸田が言ったこと聞いてなかったのかよ」
「いや聞いてた! 聞いてたけど分かんねーんだっつの!」
「…渡合はまず公式を覚えような」
十河に揶揄われて拗ねる渡合に糸田が苦笑しつつも優しく宥めた。
「ていうか興本は何してんの?」
糸田が渡合に付きっきりになると、集中が削がれたのか、十河の視線が俺の隣に座る興本へと向けられた。
「ン―? 俺は井瀬の勉強を見てるけど」
興本は俺の腰を抱きながら頬杖を突き、俺の手元を見つめたまま答えた。
この体勢は興本が来てから一度も崩れていなかった。
「それが可笑しいって。どう見ても井瀬クンの方が頭良いじゃん? 第一だし」
確かに高校の偏差値だけを見れば、興本の通う学校よりは俺の通う学校の方が頭が良いと言われている。
けれど中学時代の興本を知っていれば、今の状況は全く正当だった。
「そうだなー。特に大きな間違いもないし。井瀬、今から遊ぶ?」
糸田が十河と渡合に付き合っている間、俺は黙々とプリントをこなしていたので、だいたいは終わってしまっていた。
それを見て興本は俺に顔を近づけながら妖しく誘う。
「遊ぶって…」
どういう意味なのかと聞こうとしたところで、興本の唇が俺の頬に触れた。
チュッと大げさなほどのリップ音を立てて、同時に床へと押し倒された。
「えっ、ちょ! 興本…んっ」
興本が覆い被さって3人から俺の姿は死角になっているとは言え、何をされているのかは一目瞭然で、俺は慌てて興本の肩を押して体を退かそうとするけれ、興本はピクリとも動かなかった。
「おーい、ここで盛るなー!」
俺の頬を両手で挟み、額をくっ付けて見つめてくる興本の後ろから、渡合の声が聞こえた。
「興本…、ここじゃ嫌だ…」
添えるだけになってしまっている肩に置いた手にぎゅっと力を入れて、俺も小さな声で抵抗を試みた。行為を否定しているわけじゃないから、逆らっているわけではないという意思表示でもあった。
興本はふっと笑って目元、耳元にキスを落としていった。俺の抵抗はどうやら聞き入れてもらえなかったようだ。
「つぅかさー、俺怒ってんだよね」
「え?」
興本のまさかの発言に俺は驚いた。怒っているようには聞こえない甘い口調で興本は怒っていると言った。
「井瀬がテスト期間の時は会わないようにって、気を遣ってたのにさあ。なんで渡合の誘いにはほいほい着いていってんの? しかも俺には一言も連絡なかったよね? 渡合から聞かされてどう思ったか知ってる? 前もって教えてくれたら俺だって予定なんて入れてなかったのに」
「興本、渡合なんかに嫉妬かよ?」
捲し立てる興本に後ろから十河が突っ込んだ。
興本はすっと体を離して体を起こした。寝そべったままの俺に腕を伸ばして抱き起こしてくれた。
「俺、井瀬に対しては独占欲強いみたいだから」
抱き起こされた俺はそのまま興本の膝の上に座らされた。少し目線が興本の上になり、視界が広がる。これはとても恥ずかしかった。
居た堪れなくて、思わず興本に抱き着いて首元に顔を埋めた。
「いやいや、勝手に嫉妬されて盛られても困るから! 絶対ここではスんなよ!」
俺だって嫌だ。
でも決定的な拒否権は持っていなくて、ただ祈るように興本の首元に抱き着くしかなかった。
興本の俺の髪を優しく撫でてくれる。
「じゃあ隣の部屋借りるけど、良いよな?」
興本が言ったことに対して渡合が言葉を詰まらせた声が聞こえた。
「うぅ…」
隣の部屋に何か問題があるのか、俺には分からないけれどとりあえず何でもいいからこの恥ずかしい空気から逃げたかった。
「渡合、貸してやれよ。隣って兄貴の部屋だろ。どうせ今誰も使ってないんだし」
「でも絶対兄貴にばれる! 怒られんのはオレなんだからな!」
確か渡合のお兄さんは今家を出ていっていると十河が言っていた。使われなくなった部屋は、けれどそのまま残っているのだろう。
「でもそしたら興本、ここでおっ始めるぞ」
「うう…っ」
「あの、俺帰ろうか?」
居た堪れないのは俺だけではなかったようで、おずおずと糸田が声をかけた。
しかし、それはそれで渡合にとっては不都合なようだった。
「だ、だめ! まだオレ問題集終わってないし! 糸田が帰ったら意味ないじゃん」
「じゃあ興本達が部屋出るしかないな」
十河が結論付け、興本はそれに従うように立ちあがった。
俺はいったん興本の膝から下ろされ、そのまま肩を抱かれて隣の部屋へと連れて行かれる。
「ま、煩くはしねーから」
部屋を出る際、ちらりと振り向けば、真っ赤に顔を染めた糸田と目が合って、俺は慌てて顔を逸らした。
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