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3年生になりました
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学年末試験が終わり、無事に2年生を終えることができた。
例年より遅めの開花を迎えた桜と共に、俺たちは最終学年へと進級した。
「おはよう」
玄関前で群がる生徒の中に紛れていた俺に、知った声が背後から聞こえた。
「おう、おはよう、糸田」
「もう見た?」
糸田が玄関前に張り出された紙を指さして聞いてきたので、頷いて答えた。
人だかりを作って俺たちが見ているのはクラス替え発表だ。
「俺は5組だった」
「井瀬は5組か。俺はー……あ、2組だ」
「そうなんだよなー」
5組のクラスに載っている名前をざっと見たところ、俺と仲の良い奴らは皆クラスが離れてしまっていた。
「2組は誰かいた?」
「同じ部の奴が何人かいるから、そいつらとつるむわ」
糸田は特に問題もないようで、俺は気づかれないようにため息を吐いた。
昨年糸田と知り合う前の様に今年もまた友人作りから始まる1年になってしまった。
3年にもなると半分ほどが選択科目になるので、クラスメイトと言っても同じ教室で授業を受ける時間は昨年に比べれば少なくなる。
とはいえ高校最後のクラスになるので、それなりに交友関係は重要なのだった。
教室へ入り、黒板に張り出された座席表を確認する。
見覚えのある名前は並ぶものの、どれも親しいわけではなかった。
んー…、とりあえず今日は糸田の教室で昼飯食べようかなー。
そんなことを思って隣の席の名前を見れば、宗田(そうだ)と書いてあった。
席の方に顔を向ければまだ空席のままだ。宗田はまだ来ていないらしい。
空席が目立つ教室の中を歩き、自分の席へと座った。
年末の大掃除で磨かれたはずの机の上は、去年の卒業生が消したであろう落書きの痕が僅かに残っていた。
それでもこの机が、この一年間俺が世話になる机だ。そっと撫でて、消し切れていない落書きの跡を丁寧に消していった。
「おはよー!」
消しかすを片付けた後、明るい声で挨拶をされた。目の前には茶髪のイケメンが笑顔で立っていた。
見たことのある顔だった。
「あ、おはよう」
興本たちの通う学校は割と髪の色が奇抜な生徒も珍しくはないかもしれないが、この学校では茶髪というだけで異質だった。それも目の前のイケメンくらいに明るい色は中々見ない。だから覚えていたのかもしれない。
彼が隣の席の宗田だった。
今まで同じクラスになったことはなかった。
「隣の席だね。これからよろしくー!」
渡合の人懐こさとも違う、爽やかな笑顔で宗田はそう言って席に着いた。
「うん、よろしく」
俺がそう言ったところで、宗田の友人らしき生徒がわらわらと集まって来て、彼を囲っていった。
それは男女問わず、賑やかなグループだった。
…うん、やっぱり今日は糸田の教室に行こう。
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