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新しい友達 -1-
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「井瀬って前は何組だったの?」
ホームルームが終わった休み時間、宗田が声をかけてきた。
「4組だけど」
「4組かー。知ってる奴いないな…。あ、前橋は知ってる? 2年の時3組だったんだけど」
3組だったのなら体育や選択科目などでは合同授業をしていたので、接点はあるはずだった。
「あー…見たことはあるかも」
話した記憶はないけれど、ぼんやりと顔は思い出した。短髪で精悍そうな顔つきで、やはり宗田と同じように女子には人気のありそうな雰囲気をしていた気がする。
というか、宗田との接点なんて今までないのだから、なぜ共通の人間を探しているのか宗田自身に少し疑問を覚えた。
隣の席のよしみで話題を作ってくれているだけだろうか…。
そんな俺の疑問をよそに、パッと宗田が笑顔を見せた。
「そっか。俺、1年の時前橋と同じクラスだったんだよね! 井瀬は誰と仲良かった?」
「去年は糸田とよく一緒にいたな。えっと、野球部の…」
糸田の名前を出した時、宗田の顔がきょとんとしたので、おそらく宗田は糸田のことを知らないのだろう。
野球部、と補足情報を与えてみれば、少し考えてからにこやかな表情になった。
「野球部な! 野球部だったら俺、有働と仲良いよ! 知ってる? 有働」
「うーん…喋ったことはないかなー…」
「あいつ良い奴だから、考えてること下ネタばっかだけどな、そこを除けば良い奴だから! 今度糸田も誘ってさ、一緒に遊ぼうぜ!」
「あー、うん、そうだね」
ニコニコと笑う宗田につられて俺も半分笑みを浮かべた。
「井瀬は何か部活やってるの?」
あ、初めて俺自身のことを聞かれた。今までにないタイプの人間で、俺は宗田という人物に対してどう応えていいか困惑しっぱなしだった。
「いや、俺は帰宅部」
「へー! 俺も俺も! じゃあさ、放課後結構遊べるよな!」
放課後と言われて、俺はすぐに興本のことを思い浮かべた。
「うん…。でも俺、ちょっと用事入ること多くて」
「用事って? バイトとか?」
「バイトはしてないけど…。ていうか、宗田の方が誘われること多そうだし、俺と遊ぶ暇ないんじゃない?」
返事に困って宗田の方へと話を振ってみた。
宗田はからからと笑って「俺は暇、暇ー!」とすぐに否定してきた。
「いやでも、今年受験生になるわけだし、色々と忙しくなるしさ」
…あれ、なんで俺こんなに誘いを断ってるんだろう?
俺自身が少し首を傾げたところで、当然宗田もそう思ったようだった。
「俺のこと、迷惑?」
「あっ、いやっ、そういうわけでは!」
「じゃあ今度遊ぼうぜ!」
強引ににっこりと笑顔で締めた宗田とタイミングを合わせたように、10分間の休み時間が終わりを告げた。
喋ってただけなのに、なんでこんなに疲れてるんだろう…俺…。
先生が来る前にこっそりと携帯を開けて糸田にメッセージを送信した。
『今日の昼飯そっち行く』
すぐに返信が届いた。
『分かった』
たったそれだけのやり取りで、なんとなくほっとできた。
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