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新しい友達 -2-
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昼休みになり、宗田が友人たちに囲まれている間、俺はそそくさと2組のクラスへと向かった。
糸田は窓際の席だったのですぐに見つかった。
「どう、新しいクラスは?」
糸田の周りには同じ野球部という2人も集まって、4人で弁当を広げることになった。
俺とも糸田を通して顔見知りなので助かった。
「んーまだ分からないなー。あ、でも担任がヤマセンなのはラッキーだった。ホームルーム短いし」
ヤマセンこと山本先生は50代の男性教師だ。気の良いおっちゃんっていう感じで、長話もないからヤマセンが担任のクラスは大抵一番にホームルームが終わっていた。
「井瀬んとこは? 5組だっけ」
「俺んとこは微妙だな。…隣の席が宗田でさ」
そうだそうだ宗田のことだ(決してダジャレではない)。これが話したかったんだ、と俺は糸田に視線を向けた。
「有働と友達だから、今度一緒に遊ぼうよって誘われたんだけど。糸田と」
視線が合った糸田は当然ながら驚いた顔をしていた。
「え、なんで俺の名前?」
「俺が糸田と仲良いって言ったら、宗田は有働と仲良いからって。有働と糸田って仲良いの?」
「まあチームメイトだし。ていうかそれ、本気で言われたのか? 宗田、誰にでもそういうこと言ってそうだし、本気にしなくても良いんじゃない?」
糸田に言われて初めて気づいた。
「それもそうか…」
社交辞令的なアレか。初めはそんなこと言っても、結局つるむこともなかったらその話も有耶無耶になってなくなったりするのか。
クラスの中心核になるだろう宗田と教室片隅系の俺が一緒に行動するのって、なんか違和感あるもんな。
「じゃあ話だけ合わせとく…。反発するのも怖いし」
俺がそう言うと、他の2人も「そうする方がいいかもな」と同意してくれた。
「宗田と有働って確か1年の時に同じクラスだったんだよな。そう言えばちょくちょく名前聞くわ」
「あ、そうなんだ。俺、どっちも知らないから」
「アレ誰だっけ。確かバレー部の子と付き合ってなかったっけ?」
「ああ、それ1年の時だろ。もう別れて、今後輩と付き合ってるって聞いたけど」
「うわ、まじか」
「それこそ有働が悔しがってたからな。あいつロリコン系好きじゃん」
「あ、そういう感じの子なの?」
下ネタ好きのロリコン趣味って…変態だな、有働。
まだ会ったこともない有働に、俺は内心引き気味だった。
いや、男とアレコレしてる俺が引くのも失礼かもしれないけれども。
「何も知りませんって顔して実はビッチ、みたいなのが良いらしいよ、有働曰く」
「後輩ってそういう感じなの?」
「有働まじ変態だな」
糸田を含めて3人は爆笑していた。
「俺は絶対清楚系だなー。蓮見(はすみ)とか可愛くない?」
蓮見、というのはこのクラスの蓮見のことだろう。俺たちとは対角線の壁際の席で、女子グループ4人と机を囲んで昼飯を食っていた。
ロングの黒髪に紺のハイソ、スカート丈も短すぎず、確かに清楚系と言えばそうかもしれない。
「まあ胸はデカイな」
「そこかよ」
「いや大事だろ。そういう糸田はどうなんだよ?」
「俺? 俺は別に…」
「別にって何だよ。中学ん時の彼女は可愛い系だったじゃん」
「え、彼女? 糸田彼女いたのかよ!」
俺の知らない糸田の話が出てきた。糸田は面倒くさそうに表情を歪めていた。
「一瞬な。すぐに振られた。んな昔の話出してくんなよ」
「いやー、この中で唯一の経験者だから、参考に」
「何のだよ」
「何ってナニだろ」
「うわ、お前も有働みたいなこと言うなって」
「ていうか、井瀬は?」
急に話がこっちへ向けられて、一瞬焦った。
何の話? タイプの子の話? 経験の話? どっちも答えづらいんだが。
あ、経験の話は童貞ってことでいいのか…。
「井瀬はどういう子がタイプ?」
「えー? 俺も別にこれと言ってはないけど」
「いやいや、あるだろー。髪はショートがいいとか、胸より尻がデカい方がいいとか」
言われて考えてみるが、女の子は皆可愛いし、特にこだわりがあるわけではない…と思う。
「井瀬は結構面食いだと思うな、俺」
不意に糸田がそんなことを言うもんだから、俺はドキッとした。
「そ、そうかな」
いかんせん、興本との関係がばれている糸田が言ったことだ。今の発言も興本を連想していることは分かりきっていた。
「そりゃ、あのカオと付き合ってんだから、そうだろ」
「いや、付き合ってるって言うか」
「えっ! 井瀬カノジョいんの!?」
「しかも美人かよ! ちょっとそこんとこ詳しく!」
「おい、糸田てめ!」
驚く2人に俺は糸田を睨み付けた。糸田はキョトンとして、なぜ睨まれているか分からないという顔をしていた。ぜったいわざとだ。
結局俺の方が質問攻めに遭い、宗田のことをどうしたらいいか聞けないまま昼休みが終わってしまった。
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