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トライアングル -2-
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興本からの連絡はなかったので、無事に糸田と会うことができた。
テスト勉強を一緒にしたところと同じファミレスで落ち合った。
俺は一度家に帰っていたので私服だったが、糸田は部活帰りのままだからかジャージだった。
「井瀬、何か食った?」
「いや、食べてきてない」
一応親には友達と会うことを連絡しているので、夕食を準備されていることはないはずだ。
「じゃあ俺もここで食おう」
そう言って糸田がメニューを開き、ステーキのBセットを頼んだので、俺も豚カツのBセットを頼んだ。ちなみにBセットはライスと味噌汁が付いてくる。
食事が来るまでは本題には入らないで、学校のことなどを適当に話して時間をつぶした。
「お待たせいたしましたー」
他愛無い話で盛り上がっていると、店員がやってきて俺の前に豚カツ、ライス、味噌汁を並べていく。
それからしばらくして、糸田の前にもステーキ、ライス、味噌汁が並べられた。
「最近は興本と会ってないの?」
ご飯をかきこみながら糸田が聞いてきた。
「基本的に興本から誘われない限り会わないんだ。だからそんなに頻繁に会ってるわけじゃないよ」
休みの時はそれこそ毎日のように連絡があったけれど、学校が始まってしまえば向こうは向こうで忙しくしているらしく、連絡があっても週に一度あるかどうかだ。
「あ、そうなんだ? 井瀬からは誘わないんだ?」
なんで? と聞いてくる糸田にとっては素朴な疑問なのだろうが、俺は何と答えればいいか困ってしまった。
「…うん、そうだな。…ないな」
興本が渡合達に軽く言えることでも、俺自身が言うのはなんだか怖くて言えなかった。
糸田に言ったところで理解してくれるとは思えないし、俺も説明できる自信がない。
「会いたくならない?」
…ん?
んん?
顔を上げると糸田は真面目に飯を食っていた。
「なんか恋バナみたいな感じになってるんだけど。なにこれ、恥ずい」
俺が言うと糸田も顔を上げてこちらを見た。
「え、興本のことじゃないの、相談って」
「いや、そうなんだけど」
興本の話なのになんで恋バナみたいな感じになってるの。
俺が思っていた感じと違って戸惑うが、どうやらお互いにすれ違いがあるようだ。
「そうじゃなくて、宗田のことなんだけど」
宗田のことは新学期の初めに話していたので、覚えていたようだ。
「ふーん。で、その宗田がどうしたって?」
「宗田がさ、興本と俺が一緒のところを見たらしくて、どういう関係なのかって聞かれて困ったんだよな。宗田、興本と中学が同じだったみたいで、変に興本のこと知ってるっぽいから、余計に何も言えなくて」
「中学時代の興本って、どんなだったの?」
「俺は学校が同じだったわけじゃないから、詳しくは知らないけど…。噂は色々あったよ。主に下ネタだけど」
「ああ…あの顔だからそりゃあモテただろうな。例えばどんな噂があったんだよ?」
「あんまり本人には言うなよ?」
「言わねーよ」
これらの噂について、俺から興本に言及したことはなかった。だから興本が当時のことをどう思っていたのか、俺には分からないのだ。
それを踏まえて糸田にも興本にまつわる噂の数々を一つ、二つと挙げていった。
教師と関係を持っていたこと、同級生を転校に追い込んだこと、年上の彼女がいたこと、熟女も相手にしていること、男ともいけるらしいこと、金さえ払えば誰とでも関係を持ったらしいこと、等々だ。
塾が一緒というだけの俺でもこれだけの話を聞いたことがあるのだから、同じ学校だった宗田はそれ以上の話を知っていたのかもしれない。
倫理に触れるものから明らかに犯罪紛いっぽい話まで、本当にいろんな話が興本の周りには飛び交っていたのだった。
「…すげぇな、それ」
挙げればきりがない噂話を一通り言い終えた後、呆れともつかない表情で糸田がため息を吐いた。
「うん。そうなんだ。それを宗田も知ってるからさ、困ってんだよね」
「確かになぁ」
うーん、と糸田も眉根を寄せて考え込んだ。
たまたま隣の席になった奴が、どうして興本と同中だったのか。
恨んでもどうしようもない事実だけが目の前にあって、俺は途方に暮れていた。
それに何より、あんなに女子にモテそうな宗田が、なぜか俺という男に興味を示してきたことが問題なのだ。
さすがにそこまでは糸田に打ち明けられなかったけれど、俺としてはここが一番の悩みだった。
暫く考え込んだ糸田が結論を出すようにゆっくりと口を開いた。
「それって興本自身に相談できないのか?」
「へ…?」
それは考えたこともない提案だった。
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