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トライアングル -4-
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興本に睨まれながら、言葉をつっかえつつ、俺は宗田のことを話した。
最初は宗田のことを思い出せないのか、黙って聞いていた興本も、噂話のあたりから明らかに表情が難しくなった。
「……で?」
一通り話し終えた後、興本はそう言って俺を見た。
「井瀬はどうしたいの」
「どうって……」
どうしたらいいのか分からないから悩んでいるのだ。
俺は答えられなくて俯いた。
「俺はその宗田って奴は覚えてないし、俺のことをどう思われてもどうってことないけど、井瀬は違うんだろ」
黙ったまま何も言えなくなっていた俺に興本が言った。
まさにその通りで、こくんと頷いた。
俺は宗田に興本との関係を正直に話すつもりはないし、好奇な目で見られるというのも嫌だった。
「だったら選択肢は限られてくるだろ。徹底的に無視するか、徹底的にぶつかるか」
「ぶつかるって、話せってこと?」
視線だけを興本の方へ向ければ、見下ろす興本の視線とばっちり合った。
「そ。ただ話付けるのは井瀬じゃなくて、俺がやる」
何でもないように言ってのけたけど、俺は驚いて顔を上げた。
俺がやる…、って。
まさかそんな風に言ってくれるとは思いもしなかった。
「興本、宗田と会うってこと?」
「ほかに誰がいんだよ。井瀬が嫌なんだったら俺が話すしかねーじゃん」
「なんて言うの? 俺のこと、ただの友達だって?」
興本が言ったからといって宗田が信じるとは思えなかった。むしろ呼びだしてわざわざ興本を出してきたところで、俺と興本の関係をばらしているのと同じようなものじゃないのか。
そこまでは言えなかったけど、俺の不安な顔が物語っていたのだろう。興本は不愉快そうに眉を寄せ、俺の顔を片手で掴んできた。
不機嫌な興本の顔は男前から凶悪になるので、まるでカツアゲされているような構図だ。
「あのさ、俺がわざわざ首突っ込んでる意味、分かってんのか」
言われて気付いた。
そう言えばどうして興本はそもそも、宗田と会って話す、という選択肢を作ったのだろうか。
「なんでそこまで…してくれるの」
分からなくて素直に問えば、興本の目つきは更に鋭くなった。怖い。
「お前は俺の物だって自覚がないわけ?」
半ばキレ気味に言われて、俺はもう半泣きだ。いや、ちょっと目が潤んできた。
「あっあるけど。だから迷惑かけたくないのに」
俺のできる限りの反論を返せば、興本からは「ばか」と一蹴された。
「お前の携帯から糸田の声を聞いた時から迷惑はかかってんだよ。井瀬が嫌だって言うなら俺は宗田にただの友達で突き通すし、 話が通じない奴なら無理矢理通せばいいだけだろ」
……なんだ、それ。
なんだそれ。
カッコ良すぎだろう、卑怯だぞ。
凶悪だけど男前な顔でそんなことを言われたら、女の子じゃなくてもキュンとしてしまったじゃないか。
「俺が怒ってんのは俺の物にちょっかい出す奴がいるってことだ。黙って遊ばれてんじゃねーよ、ばか」
「別に遊ばれてるわけじゃ」
「反応見られて困らされて、充分だろうが」
ええ…そんな…。
「井瀬、これからお仕置きな」
先ほどまでの凶悪な顔から一変し、興本は少し口角を上げて笑ってない目のまま僅かな笑みを浮かべた。まじ怖い。
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