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トライアングル -9-
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次の日、宗田は学校を休んだ。
一応担任が体調不良だと言っていたから、無断欠席ではないらしい。
明らかにその原因は昨日俺が帰った後にあったのだと思うけれど。
興本との間に何があったのか、俺は二つの意味で怖くて聞けていない。
それでも興本が何かをしたのは明白で。
俺はそわそわとしながら昼休みを待った。
そして昼休みになるとダッシュで2組に向かった。
「おー? 井瀬、今日は早いな?」
「悪い、ちょっと来てくれ!」
呑気に弁当を広げようとしていた糸田の腕を掴むと、俺は中庭へとやって来た。
人のいない中庭は芝生しかない広場で、その隅に糸田を座らせると、俺は宗田が休みだったことを話した。
「やばいって。絶対興本に何かされたって。どうしよう。俺どうしたらいい?」
腰も下ろさずに話出した俺に、糸田はただぽかんと口を開けて見上げていた。
「まあ…とりあえず落ち着けよ」
「落ち着いてられるかよ。これで宗田がぼこぼこにされてたら恨まれるの俺じゃん。そうじゃなくても何か変な感じで絡まれてたのに」
「いや、その変な感じで絡まれてたから興本が出てきてくれたんじゃん? それに俺は、興本が何をするにしても井瀬の悪いようにはならないと思うけど」
なんで興本に直接聞かないのかと糸田は言うけれど…聞かないんじゃなくて聞けないんだ。
「だって俺から興本に連絡したことない……」
「…………はあ???」
あ、ばかにされた。
糸田の顔が俺を馬鹿にしている。
連絡する必要があったり連絡をしろと言われれば別だけれど、何も用がないのに俺から興本に電話やメールを送ったことはなかった。興本の都合も分からないのにそんなことできるはずがなかった。
俺と興本の関係を知らない糸田は不思議そうな怪訝そうな視線を俺に向ける。
「じゃあ…あ、もしかして…この前俺がファミレスに呼び出したのが…ハジメテ?」
「そうだよ。まじで心臓に悪いから、もうあんなことすんなよ!」
糸田が俺の携帯を使ってファミレスに呼び出したとき、本当に心臓が止まりそうになるほどびびっていた。
お仕置きはされたけれど...、お仕置きの一つだけでも良かったのかもしれない。今思い返しても、もっと機嫌が悪かったらと思うと恐ろしい。
糸田はその時のことを思い出したようで、妙に納得したような顔をしていた。
「ああ…俺がハジメテを奪っちゃったんだぁ…」
ウンウン、と勝手に頷いている糸田に俺は思わず眉根を寄せる。
「変な言い方しないでくれる?」
「んー、いやあ、怖そうに見えて意外と可愛いところもあるんだなあと思って」
「はあ?」
へらっと笑う糸田に俺はますます訝しげに表情を歪ませた。興本を表すのに可愛いなんて言葉ほど似あわないものはないだろうに。
「まあとりあえず、話を聞く限りじゃ井瀬が心配するほど悪いことは起きないと思うけどね」
人の良さそうな笑みをにっこりと作って糸田は弁当箱を開けた。
俺はまだ不安は解消されていないのだけれど、美味そうに弁当を食いだした糸田を見ていると、その内にそんなものなのかなとも思うようになって。
悶々としながらも俺も腰を下ろして昼飯を食うことにした。
興本からも連絡がないままその日は過ぎ、宗田は次の日も学校を休んだ。
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