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巻き込まれる -3-
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不本意ながら宗田と並んで校舎を出ると、ちょうど休憩していた野球部と出くわした。
ユニホームを着ているし、揃いも揃ってほとんどが坊主頭なので分かりやすい。
野球部といえば糸田である。
「あれ、宗田じゃん! 珍しー。今帰り?」
俺がキョロキョロと糸田を探しているうちに隣を歩いていた宗田が声をかけられていた。
そういえば宗田も野球部に知り合いがいたとか言っていた気がする。
「あ、有働っち。そうそう、今から帰るとこ~。野球部は? もう終わり?」
宗田の方へ視線を向ければ、やはり坊主頭の、そしてやたらと体格の良い部員が汗ばんだ額をユニホームで拭っていた。俺が見上げるほどの身長は興本とそう変わらないかもしれないけれど、興本と違うのは横にもタッパがあることだ。
こいつがロリコン趣味の奴か…と糸田たちから聞いた情報を頭の中に浮かべていると、俺に気付いた有働がこちらへ視線を向けてきた。
無骨ながらも凛々しい顔つきで、とても変態趣味を持っているとは思えないスポーツ青年だった。
「いや、まだ今は休憩中。宗田はなに、何かやらかしたの」
有働は一瞬俺を見ただけですぐに視線を宗田に戻した。どうやら宗田がこの時間まで学校に残っていたことが相当意外だったようだ。まあ、宗田は男女関係なく友人が多いし、放課後はすぐにでも遊びに行きそうなタイプだから、有働の反応も不思議ではない。
ただ宗田にとってはそうではなかったようだ。
「は? やらかしたって何?」
宗田は頬を膨らませて不満げな顔をするが、男が顔を膨れさせたところで可愛さは一ミリもない(ただしイケメンなので女子には人気があるのかもしれんが、俺には一切伝わらない)。
「だって居残りさせられたんじゃねーの?」
「は、ちげーし! 普通にトモダチと残ってただけだし」
トモダチ、と宗田が発言した所で、有働は再度俺の方に目を向ける。勿論俺とは初対面だ。
「あ、そうなの。てっきりまたバカやらかしたのかと。去年はなんだっけ、テストで名前書き忘れて0点取って、1週間の補習だっけ」
「えっ、なにそれ笑えない」
「そこは笑って!?」
真剣に引いていると涙目で宗田が訴えてくる。まじでバカだったのかよ。
「普通にしてたら点数は取れるのに、変なところでバカなんだよなー。ウケる」
「あーそれ分かる」
「あれ、二人ともなんで急に仲良し!?」
何とはなしに有働と共感していると、有働の後ろから糸田が駆けてくるのが見えた。
「有働! 休憩終わるぞ!」
「あ、悪い。まだ水飲めてねーわ」
「はあ? 早く行ってこい!」
糸田とやり取りしていた有働は、軽く宗田と俺に手を振って慌てて水飲み場へと走っていった。
「…と、井瀬じゃん。今帰り?」
そこでようやく俺に気付いてくれた糸田に、俺は少し嬉しくなって笑みで頷いた。
「うん。糸田はまだ部活だろ」
「おお、悪いな。また連絡するわ」
休憩時間の終りが迫っているらしく、颯爽と走っていった糸田を、俺と宗田はしばらく見送っていた。
そこでふと、糸田が来てから宗田が一言も喋っていないことに気付いた。
「宗田?」
隣を見れば、ぼんやりとグラウンドを見つめる宗田がいる。どこか遠い視線を向けた宗田の腕を掴み、ぐらぐらと腕を揺らしてみるとようやく我に返ったように俺へと視線を向けた。
「宗田、どうした?」
やけに静かな宗田は気味が悪い。嫌な予感は的中するものだ。
「誰、今の」
「……糸田がどうした?」
「いとだ…」
噛みしめるように呟いた宗田に俺は眉根を寄せた。
「やばい。可愛い」
「……………はい?」
今ものすごく嫌な幻聴が聞こえたのだけれど。
「井瀬も可愛いと思ったけど、糸田も可愛くね? つか俺、糸田の方が可愛く見えた」
「あ、それはやばいね。病院行けよ」
あ。つい本音が。
しかし幸か不幸か宗田の耳には入っていなかったようだ。
「これが一目惚れかぁ。男にときめくって初めてだ。やばい、興奮してきた」
一人の世界に入っている宗田からそっと距離を置く。
「一発殴られて来い」
あ。つい願望が。
しかし今の宗田は糸田に殴られたところで、違う意味で目覚めそうで、やっぱり宗田が聞いていなかったことをいいことに今の発言はなかったことにしようと思う。
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