アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
巻き込まれる -6-
-
不意に着信音が鳴り響く。
驚いて画面を覗き込めば、糸田の名前が出ていた。
少しがっかりしつつも画面をタップして耳元に携帯を持っていった。
「もしもーし」
『おう、井瀬? 今いいか』
「うん。どうした?」
がやがやとした雑音が時折聞こえてくるので、糸田は外から電話してきているのだと分かった。
時計を見れば、部活が終わった頃だろう。まだ学校なのかもしれない。
『宗田から今度の日曜遊ばないかった誘われたんだけどさ、井瀬もどうかと思って』
「え」
まじか。あいつまじで有言実行してんのかよ。
驚きすぎて言葉を失った。俺にはとてもじゃないけど真似できない芸当だ。
いや別に、宗田のこと羨ましいとは思ってたけど、真似しようなんて思ってないし。宗田になりたいわけじゃないし。
ああ、でもなんでだろう、この敗北感は。
俺がうだうだと一人で悩んだり羨んだりしている間にも、宗田は着々と進んでいる気がする。
「今度の日曜って、部活は?」
『顧問の都合でちょうど休みなんだよ。ていうか、だから次の日曜に遊ぼうってなったんだけど』
「そうなのか…。俺は別に大丈夫だよ」
『そっか! 良かった。あ、あと、有働って奴も一緒だから』
「てことは、俺と糸田と宗田と有働の4人?」
『そう。…あれ、井瀬って有働のこと知ってるっけ?』
「いや、直接は知らないけど。ちらっとな」
以前有働と宗田が話していたのを隣で聞いていたくらいである。
『ふうん? まあいいや。ていうことだから、宗田には俺から返事しとく』
「ああ」
ほっとしたような声で糸田が電話を切り、俺も通話を終えた携帯を放った。
再びベッドに横になって天井を見上げる。
「次の日曜…か」
それまで興本から連絡は来るのだろうか。
いや、来ても来なくても、ここは宗田を優先すべきだろう。
むしろ興本からの連絡はない気がする。
ああ、なんでこんなにもモヤモヤするんだろう。こんなこと、これが初めてではないのに。
「あー! やめやめ!」
無理矢理声を出して思考を中断させる。
いつまでも辛気臭いのは疲れる。もう何も考えたくなかった。
部屋着に着替えて財布と携帯を掴む。気分転換にとコンビニへ向かうことにした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
60 / 114