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巻き込まれる -7-
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自転車で駅前のコンビニまで走る。
自宅の最寄りのコンビニにしなかったのは、店員とは顔馴染みだからだ。何も買う気がないのに自分を知っている店員のいる店には入りにくい。
特に目的の物もないので、軽く店内を一周してから本の陳列棚の前で足を止めた。
何も考えずに手にしたのはテレビ雑誌だ。
ぱらぱらと捲って見る。特に興味が惹かれる番組はなさそうだ。
それでも時間を潰すために特集されている番組内容を読んでみたりする。
そうしている内に30分は経っただろうか。そろそろ読むページもなくなってきたころ、ポケットに入れていた携帯が震えた。
雑誌を戻して携帯を取り出す。相手は宗田だった。
外に出て震え続ける携帯をタップする。
「もしもし」
『もしもし! 俺だけど。今どこ!』
なんだか焦っている様子に思わず眉根を寄せた。
「コンビニだけど。どうした?」
『作戦会議だよ、作戦会議! さっき糸田から返事きたからさ、日曜の!』
「はあ…?」
『とりあえずこの前のファミレス集合な!』
焦っているというよりは意気込みが強すぎて変なテンションになっているだけらしい。
俺が返事をする前に場所だけを告げて通話は切られた。
ため息を吐くも、行かないわけにはいかないだろう。明日も学校で会うのだから、行かない方がよっぽど面倒になるのは目に見えている。
結局コンビニでは立ち読みをしただけで、そのまま自転車に跨り、駅を挟んで反対側のファミレスへと向かった。
駐輪場に止めて、店内へと入る。宗田はまだ来ていないようで、先に席を取ってドリンクバーだけを頼んだ。ジュースを片手に席に戻ったころ合いで宗田が姿を現した。
「なんだ、もう来てたのか」
まだ制服姿のままの宗田は俺を見つけて足早にやって来た。
「今まで学校だったのか?」
「糸田と帰って来てたんだよ」
「野球部終わるまで待ってたのか」
「居残りのついでにな。補習サボったのばれたから」
「何やってんだよ…」
俺が呆れていると、宗田は悪びれた様子もなくからからと笑う。たぶんこれが初めてのことではないのだろう。
「つか、それより日曜のことだよ! 勢いで誘ったもののさー、どこが良いと思う?」
事の成り行きを聞けば、いつもの調子で軽く誘ってみれば、思いのほか宗田の都合のいい様に事が進んで戸惑っている、ということのようだ。
「決まってないのか」
「とりあえず遊ぼうってなっただけだからさ。本当は糸田と二人だけでも良かったんだけど」
そこまで聞いて、はたと疑問が浮かんだ。
「そう言えば何で俺まで? 二人でも糸田は全然気にしないと思うけど」
むしろ男同士なんだし、宗田の下心なんて疑いもしないだろう。
「いや、糸田が有働にも声かけたんだ。たまたま一緒にいたのが有働だったから。で、3人も4人も一緒かなって思って、俺が井瀬も誘えばって言ったんだ」
「あ、3人で帰ってたってこと?」
「校門までな。駅までは糸田と二人だった」
「ふーん」
「なあ、どこが良いかなぁ。遊園地とか…男4人だけって寒い?」
携帯で何やら検索しつつ真剣に悩む宗田は滑稽だけれど、それでも一生懸命さは伝わってきて、揶揄おうなんてことは思わなかった。糸田相手にそこまで真剣になるのは不思議に思うけれども。
「いや、普通だろ。夢の国ならまだしも、ちょっと遠いけど富士急とか」
「糸田って絶叫系大丈夫なの? なんか意外~」
「さあ、どうだろう」
「って知らねーのかよ」
ぶつぶつ文句を言いながら、宗田はスクロールしていた指をある所でぴたりと止めた。
「あ。ここは? 雰囲気スゲー良さそう!」
そう言って見せてきたのは夜景が有名な絶景スポットだった。
「雰囲気は良いだろうけど、それこそ男だけで行くの寒いだろー。つかお前、検索ワード間違ってない?」
ちらりと見えたのは『恋人』だの『デート』だの『落とす』だの、到底男同士で遊びに行く場面では出ない言葉だった。
「え、そうかなー。やっぱ、そうかー」
宗田自身も薄々は気づいていたらしく、はああ、と大きな溜め息をついた。
「男相手って初めてだから、難しいもんだなあ。なあ、井瀬は興本とデートとかしないの?」
「は? いや、別に、付き合ってるわけじゃないし…」
急に興本の名前を出されて心臓が飛び跳ねた。
「なーんだ。参考になんないじゃん」
「…悪かったな」
「別に良いけどさぁ。まじでどうすっかなー」
俺の動揺など気にも留めず、宗田は相変わらず携帯の画面を難しい顔で睨み付けている。
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