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グループ交友 -2-
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「え、俺らは?」
落ち込んで教室に入ってきた宗田の様子を心配した野球部2人の冷たい視線は、宗田自身に向けられた。
それもそうだ。いつの間にか日曜日に遊びに行く予定が決められていて、糸田と俺は誘われてるのに自分たちは蚊帳の外だったのだ。俺らは、と言いたくなるのは当然のことだった。
何も正直に話さなくてもよかったのに、宗田は素直に落ち込んでいる理由を告白して、逆に冷たい視線を浴びせられている。気の毒になるほどのバカだ。だが、そこが宗田の憎めないところでもあるのだ。
「二人も行く? 俺らのクラスの奴らも結構行くし、二人が嫌じゃなかったら」
クラスの奴らも行くことになり、ここで二人が増えたところで同じことだ。宗田の提案に、二人は「もちろん」と頷いた。
ということで、具体的な人数は当日にならないと分からないが、少なくとも10人ほどの団体になったのは間違いない。あわよくば二人きりに、と期待していた宗田は笑いながらもその笑みはどこか寂しそうに映った。
弁当を食べ終え、宗田がトイレに席を離れたところで、糸田がこそっと話しかけてきた。
「なあ、最近興本と会ってるか?」
昨日も同じようなことを聞かれたなあと思いつつ「いや」と首を振った。
「会うどころか連絡もない」
俺が答えると、糸田は少しだけ顔を険しく歪ませた。
「大丈夫なのか? なんか…渡合からLINE来てたんだけどさ、興本、今荒れてるらしいけど」
「荒れてる…?」
昨日の宗田からはそんな様子は聞かなかった。
「ああ。一応学校には来てるらしいんだけど、すげぇ機嫌悪いんだって」
他の誰かとよろしくやっている興本が、なぜ機嫌の悪い日々を送っているのか。
そこまで考えて、逆だと気付いた。
何か機嫌の悪いことが起きているから、他の誰かで気分を紛らわせているのではないだろうか。
そこで俺が選ばれなかったことに、少なからずショックだ。
そういう時こそ俺を使ってほしいと思う。不機嫌でも、それを俺にぶつけてほしい。
友人とも言えない関係だけれど、体だけの関係とも思いたくなかった。
けれど現実はどうだ。頼られるどころか、遠ざけられている。
最近少し興本が優しかったから、虫の良い俺は勘違いをしてしまっていたのか。
「…そうなんだ」
だからと言って、俺にできることは何もないのだけれど。
「でも連絡ないなら、井瀬にとばっちり行くことはないかもな」
「とばっちりって?」
「荒れてるって聞いてるからさ、変に当たられないんなら良いかなと思って」
「ああ、そういう…」
そういう考え方もあるのか。
俺のショックが少し和らいだところで、糸田は「何もないなら良いんだ」と姿勢を戻した。
「なになに、二人で何の話~?」
そこへトイレから戻って来た宗田が俺と糸田の間に割って入ってきた。
「いや、日曜の話」
俺は宗田のように正直ではないから、言いたくないことは話を逸らす。糸田もそれに合わせて、宗田の機嫌はトイレに行く前より良くなった。
「そうそう、日曜って言えばさぁ」
やはり宗田はどこにいてもムードメーカーだ。少しモヤモヤとした俺の心持も、誘われなくて拗ねていた二人も、宗田が話し始めた途端に僅かならがも笑みが浮かぶ。わざとか天然か、宗田がぼけたことを言って俺が無意識に突っ込む。それを糸田を含む三人が穏やかに笑う。
そういういつもの昼休みが過ぎていった。
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