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グループ交友 -5-
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すっかり女子に囲まれた宗田が視線だけで助けを求めてきたので、俺は一応『糸田と回れるように協力する』という約束を守るべく、嫌々ながらそちらへと足を向けた。
「えーと、宗田ぁ、次行こうぜ」
俺にしてはやや大き目な声で呼びかければ、宗田は待ってましたとばかりに女子の腕を解いてこちらへ駆け寄って来た。本当はすぐにでも解ける腕を、無理矢理に離さなかったのは宗田なりの優しさなのだろう。
「お、おう! 次はどこ行く?」
腕を離された女子の一人は俺をじろりと睨み付けてくる。背を向けてる宗田は気づかないまま嬉しそうにさっさと糸田の横に並んだ。
「井瀬ぇ、空気読めよー」
クラスメイトの男たちが揶揄うようにカラカラと笑いながら俺の肩を叩いて通り過ぎていく。
空気読んで宗田を呼んだんだよ、とは言えないまま、女子たちも俺を睨んで宗田達に合流していった。
......なんで俺がこんな目に合わないといけないんだ。
いや、分かってたけどさ。
確実に俺はクラスメイトの女子3人を敵に回したことになっている。
それがどうした、と強がる自分と、少なからずショックを受けている自分とが複雑に心の中で居座って、俺はしばらくぼんやりと次のアトラクションを選んでいる宗田の背中を見ていた。
「気にすんな」
いつの間にか俺の傍に来ていた有働が軽く背中を叩く。
「あいつらだけが女ってわけじゃないからさ」
「え」
思わず有働を見上げると、優しく労わるような笑みを浮かべていた。
何かを勘違いされている気がするが、それを確認するのも怖い気がした。糸田とのことといい、妙に勘が冴える有働には変な風に誤解されている気がする。
「井瀬にはもっと純情な子が合ってると思う」
それは暗に女慣れしてないと見られてるということだろう。それはそれで正解だが、何の慰めだとも思う。
「ああっ、また二人で話してる! ちょっと仲良くなるの早すぎない?」
宗田といることで自然とグループの中心に居た糸田が俺らに気付いて、また怒ったように眉根を寄せてこっちへやって来た。
おいおい糸田! なんですぐにこっちへ来るんだ! 後ろで宗田が恨めしそうに見ているじゃないか!
「ていうかなんですぐに離れるんだよ。俺、なんかずっと女子に睨まれてんだけど」
小声で糸田に怒られ、宗田が離れなかったばっかりに糸田はまさにさっきの俺の状態がずっと続いていたのだとやっと気づいた。それもそうだ。女子の狙いは初めから宗田だけなのだ。
「う…悪い」
「なあ、宗田達と別々で行動できねーかな。せっかく遊びに来たのに、ずっと睨まれてたんじゃ全然楽しめねーもん」
「い、いや、それは…せっかくなんだし…」
糸田の言いたいことはすっごく分かるのだけど、そうすると計画した宗田としては本末転倒になるので、相談に乗った俺としても別行動だけは避けたい。
むしろ女子をどうにかしたいのだが、いかんせん良い策が思い浮かばない。
「じゃあ女子の方をどうにかするしかないな」
有働が言い、何かあるのかと期待した目で見上げる。
「どうにかって?」
「ナンパでもされてくれればなぁ」
そう言って有働の視線を辿って俺たちも女子の方を見るが、明らかに宗田をはじめとする男たちを連れている彼女らをナンパしようなんて言う野郎がいるとは思えなかった。
「ナンパするにしても男連れは無理だろ」
俺の思考を糸田が代弁してくれる。まあな、と有働もそれは分かった上での希望的観測だったようだ。
「ナンパじゃなくても、道聞いてくれるイケメンがいたらさ、女子はそっちに付いて行きそうじゃないか」
「そんなイケメンどこにいるんだよ」
都合良すぎだろう、と思いつつ聞いてみるが、そこで「あ」と何かを思いついたように声を上げたのは糸田だった。
「渡合達、誘ったら来ないかな!?」
「え、わざわざ呼び出すのか」
電車に乗って入場料のいる遊園地に。
「女の子いるって言えば、渡合なら来るんじゃないかな」
「えぇ...」
そんな風に言うのは渡合に失礼じゃないのか。
と俺は思うのだけれど、女子たちに睨まれすぎて精神的に若干やられている糸田はそんな渡合が救世主の様に思えたのだろう。既に手には携帯が握られていた。
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