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お仕置き -1-
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興本の登場であっけなく遊園地から出た俺は、そのまま興本に連れられて繁華街の近くの駅で降りた。
数駅先は大きなターミナル駅があるからか、その駅を利用する人は少なく、手を繋がれたまま興本は黙ってただまっすぐに歩く。裏路地に入ったところで段々とその景色に見覚えが出てきた。
最近では久しく来なかったこの場所は、けれど興本と出会ったばかりの頃は頻繁に来ていたところだった。
下町の住宅地を入ってしばらく、一つのアパートが見えてきた。元々は白く塗られたのであろう壁は所々剥げ落ちて、二階の通路に建てられた鉄の柵はすっかり錆び切っている。
階段の前には小さな駐輪場があり、そこには錆びて使いにくそうオレンジの自転車と、まだ比較的新しい青と黒の自転車が並んでいた。その隣のゴミ置き場にはいくつかのゴミ袋が転がっていて、人の生活が見て取れる。
あの頃と変わらない雰囲気のそのアパートで、これから何をされるのかと簡単に想像できた俺は思わず、繋がれた興本の手をぎゅっと握り返した。
そんな俺の方をちらりとも見ず、興本はアパートの奥の部屋のドアを鍵もなく開けた。
簡単に開いたドアの先には廊下も玄関と部屋を区切る扉もなく、ただ6畳ほどのワンルームの部屋がある。
玄関から手を伸ばせばすぐ届くほどのところにある申し訳程度の台所は、ガスコンロが一つと小さなシンクがあり、いくつかのカップ麺の食べ痕が無造作に転がっている。
その向かいに少し壁が出ていて、狭いユニットバスがあり、俺は腕をぐっと引っ張られて何を言われるでもなくその中へと押し込まれた。
「中に入れ」
興本がようやく放った言葉はそれだけで、俺は頷く暇もなく浴槽の中に足を入れた。
「…っわ!?」
すると突然冷たいシャワーを浴びせられた。
驚いて声を出したけれど興本は俺の様子など意にも介さず、服が濡れるのも構わずに俺にシャワーを浴びせる。
そして何を思ったのか、興本自身も浴槽の中に入ってきた。二人してすでにびしょびしょに濡れている。
呆然と興本を見上げる俺に、興本はようやく表情を崩した。口角を上げて、けれど目元は緩んでいない。
「お仕置きの前に洗浄しないとな」
洗浄とは、この濡れた状態のことなのだろうか。
寒さからかカタカタと震え出した俺の肩を抱き、興本は俺の体をその腕の中に収めた。
「お…きも、と……?」
「ふふ。震えてる。かわいー。思い出す? 怖い?」
興本に抱きしめられて、確かに温もりはそこにあるのに、俺の肩はずっと震えたままで。もっと言えば肩だけでなく、両手も足も、小刻みに震えている。
耳元で聞こえてくる興本の声は優しいが、俺にはその言葉の意味が分からなかった。何を思い出して、何を怖がると言うのか。
久しぶりに来たこのアパートの部屋には確かに思い出したくないようなできこともあったけれど、正直3年前のことなどあまり覚えていないのだ。
けれど正直にそれを言うこともなく、俺は素直に身を委ね、興本の首元に顔を埋めた。まだお仕置きが始まっていないのか、興本が優しい。それだけで俺は嬉しい。
俺が喜んだのも束の間、すぐに興本は体を離し、シャワーヘッドを手に取って俺の体に直接水を当てだした。
やがて水は温かなお湯に変わるが、俺の体はずっと震えている。
無意識に興本の裾を掴んでいたが、その手も離され、俺はきっと情けない顔をしているのだろう。興本がひどく楽しそうに目元を緩めた。
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