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お仕置き -3-
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濃厚な口づけをたっぷりと交わした後、興本は呆気なく俺の腕を離し、立ち上がった。
そしてそのまま部屋の端にあるタンスを開け、服を着始めた。俺は嫌な予感だけがよぎり、じっとその行動を見ているが、すっかり身だしなみを整えた興本はくるりと俺の方ほ振り返ると何でもないように言い放ったのだった。
「じゃあ俺、これからちょっと出てくるから」
「え……?」
「井瀬はそのまま留守番だから」
「え、やだ…なんで…?」
「お仕置きだって言っただろ? ちゃんとそれ入れとけよ」
そう言って指さしたのは、未だ俺の尻に埋め込まれたままの機械だ。
嘘だろ…と興本を見上げるが、興本「いい子にしてろよ」と俺の頭を小さな子にするみたいに撫でてから出ていった。
出ていってしまった。
パタン、とドアの閉まる音がして、あとは何もない静けさだけが部屋に残る。
これほどの絶望感はない。
ウインウインと機械が動く。自動操縦されているそれに俺は抗うこともできずに濡れた布団の上で蹲っていた。興本の指の様にイイところを掠めるでもなく、ただ違和感しかないそれは不快でさえもあった。
少し肌寒くなって手元にあった掛け布団を手繰り寄せる。興本が居たときには悦んでいた俺の息子も今ではすっかり萎んでしまっている。
興本が出ていってどれくらいが経ったのか。時計もなく携帯も探せず、俺はただ静かな時間を耐えていた。
興本…。どこ行っちゃったんだよ…。
寂しくて悲しくて。けれど泣くに泣けないこの状況に、俺はどうしようもなくて。ただ興本が早く帰って来てくれることを願っていた。
そもそもなんでこんなことになったんだっけ。どうして興本を不機嫌にさせてしまったんだろう。
そんなことを考えていると、不意にガチャガチャと鍵を回す音が聞こえた。
「…っ!」
興本は鍵をかけていなかったから、逆に鍵が掛かってドアがガタガタと揺れる。鍵を回した人物はそれに気づいてもう一度鍵を回した。
明らかに興本ではない人物に体が完全に硬直する。
ガチャンッと大きな音を立ててドアが開いた。
「誰だよ。鍵くらい掛けろよなぁ」
独り言を放った人物は足音を立てて部屋に入って来る。掛け布団にくるまったままの俺はその動作を息を殺して見守っていたが、当然のことながらまっすぐに進んできたその人物と目が合った。
「あ? お前誰だよ?」
口の悪いそいつは、見た目も野暮ったい男だった。
まず目についたのはセットのされていないボサボサの茶髪と、口の周りに生えた無精髭だ。目つきは悪いが、顔立ちは割と整っている方だろう。皺だらけのロンTとダメージだらけのジーンズという出で立ちは、このアパートの住人というには納得できる風貌だった。
「あ…」
睨まれて体が竦む。
けれどその態度がいけなかったのか、苛立ちを見せたその男はずんずんと近づいてくる。そしてとうとう俺の目の前までやって来ると、しゃがみ込んで俺の顔を覗いてきた。
「あん? どっかで見たような顔だなぁ。人んちで何やってんの」
男に俺の顔は見覚えがあるようだが、俺には全く男に覚えはない。
ぎゅっと掛け布団を握りしめるが、それは男によって呆気なく剥がされた。
「うおっ! なんつー恰好してんだよ」
掛け布団を引き離せばそこには全裸の俺がいる。男は思った通りの驚愕した反応を示し、そしてすぐに俺の尻に入っている機械にも気づいた。
「あーらら。オモチャまで使われてんの。何、それ、自分でしたの?」
とんでもない濡れ衣を着せられそうになって、俺は慌てて首を横に振った。それはもう思い切り、頭がくらくらするまで振ったのだ。
俺があまりにも頭を振るから、男は笑って俺の頭を撫でた。笑うと目つきの悪さが無くなって、どことなく優しい雰囲気になる。
「そんなに否定しなくても冗談だ。どうせ匠真か真司の辺りだろ、そんな悪趣味なことするの」
男はそう言って自ら剥がした掛け布団を再び俺に掛けてくれた。どことなくではなく、たぶんこの人は優しい人だ。
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