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月曜日 -3-
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宗田と共に昼休みに2組へ行くと、糸田と加藤だけがいた。森野は何やら呼び出しを食らっているらしい。
「おお、井瀬。昨日は大丈夫だったのかよ」
「あの後何もなかったか?」
開口一番、昨日のことで加藤と糸田に声をかけられる。ただ二人の意味合いが若干違うのは、俺にしか分からないだろう。
「ああ、大丈夫だよ。ありがとう」
ここで詳しく言うわけにもいかず、当たり障りのない返答をする。
「そういえば井瀬が帰った後、凄かったんだぜ。主に女子のテンションが」
加藤が伝えてくれる俺のいないその後の話だ。今日の午前中で散々女子が騒いでいたので、それは既に実感済みである。
「あの二人、糸田の友達とか言ってたけど本当なの?」
そこで問いかけてきたのは宗田だ。本当はずっと気になって仕方のないことだったんだろう。それでも糸田自身に聞きたくて今まで黙っていたんだろうか。
「本当だって。昨日も言っただろ」
いや違った。糸田の口振りからして、昨日の時点で散々と問い詰めていたんだろう。
それでも納得できていないらしい宗田の様子を見ながら、けれどその宗田の反応は尤もだとも思う。今朝の女子も言っていたが、俺だって事情を知らなければ糸田と度会や十河が友達だなんて信じられない。
「あ、それは俺も思った。どこで知り合ったんだよ? 中学の同級生とかでもないし」
糸田と中学が一緒だったらしい加藤も参戦してきては、いよいよ糸田も困った顔を隠せなくなっていた。
かと言って俺の方に視線を向けないで欲しい。あの場に居なかった俺にはどうしようもできないのだ。
「どこでって、友達の紹介としか言えねーよ。強いて言えばファミレスか?」
「なにその合コンで知り合った彼女を誤魔化すみたいな言い方。しかもファミレスかよ」
「えっ、合コン!? 糸田、合コンとかすんの!?」
「例えだろ。真に受けるなよ」
しどろもどろに答える糸田に加藤が笑えば、慌てた反応を見せる宗田は確かに滑稽だった。
けれど宗田は至って真面目に言っているのだということを俺は知っている。
だから俺が呆れながらもフォローの意味で突っ込めば、加藤が「そう言えば」と宗田の大きな反応を面白がってさらに続けた。
「糸田の前の彼女は合コンで知り合ったようなもんだろ? それこそファミレスで御ままごとみたいな感じだったけど」
そんな爆弾発言をするものだから、宗田は気が気ではないだろう。
「え、彼女? 糸田彼女いたのか?」
「宗田、そのカオは失礼だろ。確かに糸田は宗田と違ってモテないけどさ」
「おい加藤。お前の方がさり気にディスってるからな」
糸田は軽く加藤の頭を叩く。
「あ、でも前のってことはもう別れてるんだ?」
宗田が身を乗り出して糸田に問えば、言いにくそうに糸田は首肯した。誰も失恋話なんてしたくはないだろう。
「中学の時に付き合ってたけど、受験で距離ができてフラれたんだ。よくある話だろ」
世間一般的にはよく聞く話ではあるが、糸田がそれに当てはまるとは思わなかった。というか、宗田同様、糸田の彼女の話は俺もよく知らない。以前にちらっと聞いただけだ。
「うわー…まじかー…」
宗田はよく分からないショックを受けている。見事に肩を落として机に額が付くほど項垂れている。
「なんで宗田は落ち込んでいるんだ?」
そこへ呼び出しから帰還したらしい森野が宗田を見て首を傾げる。
「お帰り。糸田に彼女がいたことがショックらしいよ。自分の方がよっぽど彼女作ってたのに」
森野の問いに加藤は答えつつ、それよりヤマセンからの呼び出し何だったん? といつもの調子で話しだす。
「何がそんなにショックなんだよ?」
加藤と森野の会話が続く中、俺がこそっと尋ねれば、宗田は項垂れたままちらりと俺の方に目だけを向けて小声で答えた。
「糸田の元カノに嫉妬した…。糸田の可愛さに気付いたのが俺だけじゃなかった…」
いや、おそらく、糸田の可愛さとやらは宗田にしか分からないよ。
と、俺は瞬時に思ったものの、今の宗田に掛ける慰めの言葉にはならない気がして口を閉じた。
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