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月曜日 -4-
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糸田の元カノの話から、そう言えば井瀬は美人の彼女と付き合ってるんだろう、と加藤と森野は言いだしたのだが、宗田はそれには一つも反応せずに落ち込んだままだった。それもそうだ。宗田にはきっとそれが興本のことだと分かっているし、今は糸田にしか眼中にないのだから。
そんな、俺にとってはひどくどうでもいい話題で終始した2組での昼休みは終わり、食べ終えた弁当箱を持って5組へ帰る廊下を進む。
隣を歩く宗田はしばらく視線を下げたままだったが、ふと急に顔を上げた。
「糸田に元カノが居たってことは、童貞じゃないってことだよな。だったら俺のことも抱けなくはないってことじゃね?」
え。なにその超理論。
どこでどういう経緯を辿ればそんな結論になるのか。ポジティブとは違う思考回路に俺は戸惑いを隠せない。
「童貞じゃないことと男を抱くことはイコールにはならないと思うぞ」
そして廊下で歩きながら話す内容でもないと思う。
なんだか希望が見出したように姿勢を正した宗田に釘を指せばぎろりと睨まれた。
「でもナニをどうするかってのは分かってるってことにはなるよな」
「そもそも中学生のお付き合いで経験済みかどうかも怪しくないか」
更に追い打ちをかけてやれば、俺を一瞬睨む目つきが鋭くなった。それでも全く怖くなかったのは、すぐにその鋭さはなくなり、泣きそうなほどにその顔が情けなく哀しそうな表情を浮かべていたからだろう。
「そうじゃなくてさ、それよりも先に言うべきことがあるんじゃないの」
俺が言うのもなんだけど、抱く抱かないの話の前に、まずは恋愛対象として見られることを考えるべきじゃないのか。
そんな根本的なことを言いたいのだけれど、それが一番難しいことのように思えた。
月曜日のホームルームでは先週渡された進路調査票の回収が行われた。
先週配られたとき、宗田は遊園地のことが先だと言って机の中に仕舞ったままにしていたことをすっかり忘れていたようで、慌てて書いていた。後ろの席から何度となく突っつかれながらもようやく書き終え、何とか担任からのお咎めもなかったようだ。
この調査票を元に進学組と就職組で別れて進路指導が始まり、二者面談、三者面談と予定が組まれていくということを説明された。
それらをただぼんやりと聞いている内に1時間はあっという間に過ぎていった。
気が付けば周りはがやがやと帰る準備をしている。もうホームルームも終わったようだ。
「おい、本当に大丈夫か?」
しばらく座ったままの俺に気付いた宗田が、顔を覗き込んできた。
「ん、ああ。ちょっとぼーっとしてた」
「井瀬が珍しいな。ほんとはまだ体調万全じゃなかったんじゃないか」
「いや、大丈夫だよ」
途中まではちゃんと話を聞いていたという意味において俺は笑って答えた。昨日の体調不良は仮病みたいなものだから、真剣に心配されるとどこか心苦しい。
「ならいいんだけど。このあと時間ある? どっか寄って行こうぜ」
昨日の今日で宗田が誘ってくるということは十中八九糸田の相談事だろう。寄りかかった船だと俺は頷いて立ち上がった。
ちらりと朝家に置いてきた興本のことが頭に過ったが、一日ずっと俺の家にいるとも思えなくて、とりあえずメールだけ送っておくことにする。
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