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月曜日 -5-
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宗田と並んで学校を出るとき、ランニング中の野球部に出くわした。そう言えばそろそろ夏の予選が近いという話を聞いた。おそらく糸田たちにとっては最後の試合になるんだろう。引退試合という言葉は部活に入らなかった俺にとって、少しだけ羨ましい響きだ。
ここ何度目かのファミレスにやって来た。駅前という立地条件が良いからか、行き慣れているからか、近くのファーストフード店よりも空いているからか。
何にしても俺たち金のない高校生にとってはとても便利な場所であることに最近気づいた。
「それで結局、あの後糸田とはどうだったんだ?」
学校では肝心のことが聞けなかったので、俺から切り出してみる。
向かい合わせに座る宗田はドリンクバーのコーラを一口飲んでから話し始めた。
「どうもこうないよ。糸田と井瀬が居なくなったと思ったら、糸田は友達とか言う男を二人連れてきてさ。女の子たちを引き離してくれたのはいいんだけど、何かあるたびに糸田は引っ張られるし。俺としては今回の遊園地デート、大失敗だ」
クラスの女子に負けて一緒に遊園地へ行った時点で失敗だったとは思うけど。
とはさすがに酷すぎるかと、項垂れる宗田の姿を見て口を閉じた。
グラスを片手に肩を落とす宗田はまるで酔っぱらいの中年オヤジさながらである。そこに爽やかさなど微塵もない。
「もうあれこれ考えないで、二人で遊びに行けば良いじゃん」
「二人はまだ早いよ! せめて井瀬がいてくれないと…」
「宗田ってそんなに奥手だったっけ?」
興本に憧れて経験人数も豊富だと自分で言ってなかったか。
女の子一人一人にこれほど時間をかけていたら、興本の様に手あたり次第の真似はできないだろう。
俺が首を傾げると「糸田は違うんだ」と真剣な表情で首を振られた。
「糸田は俺が初めて惚れた男だから、今までとは違うんだよ」
糸田の何がそこまで宗田を突き動かすのか俺には全く理解できないけれど、そんな宗田の表情を見れば俺が否定することもできない。
「ということで、デート第2弾の作戦会議を行おうと思います!」
ダンッ。とコーラを飲みほしたグラスを叩きつけて宗田が言い放つ。その音の大きさに俺は少しビビった。
「今度は大人数にならないように、映画とかどうかな」
「良いんじゃない」
「糸田はどんな映画が好き?」
「糸田に聞けよ」
「井瀬は親友だろ。それぐらい知っとけよ」
宗田の言葉に俺は喉を詰まらせた。
今は興本のこととか色々知られて割と何でも話せる仲にはなっているが、糸田と仲良くなったのは去年同じクラスになったからで、それもクラスで話すくらいの距離感でしかなく、休みの日に遊びに行くほどの親交はなかった。
「しょうがなだろ…。一緒に映画に行ったことないんだから」
俺ももっと糸田と仲良くしたいな、と思った。親友と言える友人は今までいたことがなく、小、中学と仲良かった友人たちも高校で進学先が別れれば滅多に会うこともなくなってしまった。
それに、宗田とは意味が違うが俺も糸田は好きだ。糸田にとって一番でなくても、少なくとも俺にとっての一番が糸田になるのなら俺はそれで嬉しい。
「ふーん。井瀬もないのか。じゃあ映画で決まりだな。見る映画は当日決めればいいし」
なぜか勝ち誇った笑みを向けて、満足そうに俺に言う宗田に、少しだけイラッとする。
これはたぶん、友人を取られたような嫉妬だ。
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