アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
月曜日 -6-
-
「ただいまー」
宗田と別れて家に帰ったのはたぶんまだ夕方くらい。最近は少しずつ日が沈む時間が遅くなってきたから、まだ少し明るいくらいの頃合いだ。
両親はまだ帰ってない時間だけれど、玄関に見覚えのある靴があることに気付いて、俺の心臓が僅かに速くなった。
だってもう居ないと思っていた。
急いで靴を脱いでリビングを覗く。
誰もいないことを確認して体を一瞬で翻す。
足音なんか気にする暇もなく駆け上がり、自分の部屋へ飛び込んだ。
「…興本」
ドアを開けて正面にあるベッドにその姿はあった。
今朝、俺が部屋を出て行った時から少し体勢を変えて、興本は寝ていた。
俺の声が聞こえたのか、その前から気づいていたのかは分からないけれど、興本はもそもそと動いて顔をこちらに向けた。まだ重たそうな瞼がゆっくりと持ち上がり、俺を見る。
「おかえり」
「た、ただいま…」
その声に怒りの色はなく。それでも俺は少しだけビビりながらそろりと近づく。
「興本、ずっと居たの? 学校は?」
膝をついて目線を合わせる。目の前にある興本の顔は寝ぼけた様子なのにやっぱりかっこいい。
「サボった。井瀬は? なんで学校行ったの?」
あれれ。まさかのお叱り。
学校に行くのは学生の本分で、俺は高校生だから学校に行くのは当然で。それを言うなら興本も同じ身分で。むしろなぜ学校に行かない選択が正解となっている感じなのか。俺は咄嗟に反応できなくてじっと興本を見つめたまま固まってしまった。
キョトンとする俺に、興本は体を起こして触れ合うほどに顔を近づける。
鼻の先が当たって、興本が顔の角度を僅かに傾けた。
「俺を置いて勝手に出るなって、言ったよな?」
「…あ」
それはでも、と言い訳をする隙も与えず、俺は口を塞がれた。唇を押し付けられて、そろっと舐められる。掛かる息が熱い。
目が合ったまま、興本は意地悪く笑った。
「もう一回お仕置きする?」
低く重い声で問いかけられて、俺はフルフルと首を横に振った。
これは言い訳するのも許されない。
声をかけたけど興本が起きなかったんだ、と言えばまるで興本自身が悪かったんだと言っているのと一緒だから、保身にもならない。
「まあいいや。ちょっとしんどいから、こっちおいで」
重そうな目をそのまま閉じて、興本は再びベッドの上に伏した。
腕を伸ばして俺を呼ぶ興本は確かにだるそうで、先ほどのキスでも感じた吐息の熱さの意味を俺はようやく理解した。
「興本、大丈夫?」
慌てて体を伸ばして興本の額に掌を当てる。
やっぱり熱い。
なのに興本は額に当てた俺の手を掴んで、体調不良を思わせない力で俺をベッドの上へと引き込んだ。
いや、これは単純に俺が興本に抵抗する力を持っていなかったからだ。
「大丈夫じゃないから、こっちおいで」
興本はそのまま俺を抱き枕にして、寝心地を探るように何度か身動ぎをする。
俺を胸に収めた興本の腕は逃げることを許さないというかのように力強かった。
トクトクと少し速い興本の鼓動を聞きながら、俺は興本の背中に腕を回して、優しく撫でてみる。
「朝はごめん」
素直に言葉が出てきて、けれどそれはとても小さかったから、興本の返事はなかった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
83 / 114