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風邪 -4-
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目が覚めたとき、少し頭がくらくらと重たかった時点で、これはヤバイなという予感はあった。
「あ、起きた?」
目を開くと、暗かったはずの部屋が明るくて、あまりの眩しさに思わず目を細める。そしていつの間にか自分が寝ていたことに気付く。顔を上げようとして体の異変に気付いた。
「うっ…」
頭が重い。
「井瀬? まだ寝る?」
一瞬持ちあげた頭を再びベッドの上に落とし、目を閉じた俺に興本の手が優しく触れる。その手はしっとりと冷たくて心地よかった。
「んん、起きる。…興本はもう良いのか」
そう言えば興本は布団から出ている。
というか、どこから入ってきた?
こちらにやって来た興本を見上げると肩にタオルを巻いて、髪が濡れていた。
「お陰様で。寝たらだいぶすっきりした。ついでにシャワー浴びて汗落としてきた。ここまで来た記憶あんまないんだけど、連れてきちゃったんだな」
興本はベッドに腰掛けて俺の頭を撫でる。顔色が良くなっているから、体調が回復したのは本当なんだろう。
「まだ朝じゃないし、井瀬はもう少し寝た方が良いよ。風邪移しちゃったみたいだし」
頭を撫でていた興本の手が首まで降りて、首筋を手の甲でなぞられた。
「ちょっと熱くなってきてる」
そう言われて、ああ、だからか、なんて思った。
思考がぼんやりとして上手く脳みそが働いていない感じは風邪の症状に似ていた。
「そりゃ、ずっと一緒にいたら移りもするだろ…」
「そういうとこ、可愛いよね」
当たり前のことを言ったら、変なことを言ってきた。相変わらず興本の審美眼は可笑しい。俺はなにも可愛いことは言っていない。
「ていうか、服着なよ。風邪ぶり返すぞ」
パンツだけ履いて足を組んでいる興本に注意すると、興本はそのまま布団に入ってきた。ぴったりと体をくっ付けてくるので、腕を伸ばして引き離そうとするが、生憎俺にそんな力は残っていなかった。
「こうしてればあったかい」
「風邪菌がループするだけじゃん」
「井瀬のはもともと俺の風邪でしょ。俺には抗体ができてるから大丈夫だよ。だから大人しく寝ような」
小さな子供に言い聞かせるように興本は俺の頭を抱えてくる。
言いくるめられているようで腑に落ちないが、対抗する体力もあまりないので、俺は仕方なく興本に寄りかかる。反抗するにも体力は要るものなのだ。
そうして俺は再び意識を飛ばしてしまったのだった。
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