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Wデート -2-
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2組で過ごす昼休みは平穏に過ぎ、結局宗田は面と向かって糸田と映画の話をすることはなかったようだ。
放課後は糸田が野球部に出るので話すことはできず、グラウンドを走る糸田を横目に校門を出た。
そう言えば俺はまだ、宗田に興本が一緒に行こうとしていることを言えていない。朝は早速伝えようと思っていたし、タイミングとしてはいつでも言える。けれど今は、できれば宗田が糸田に日時を伝えて、落ち着いたところで切り出すのが良いのではないかと考え直した。
何が言いたいかというと、その日は言わなかったということだ。
結果として、あれから2週間経った今でも言わないままでいる。
つまり宗田も糸田に時間の話をできていないということである。
何をやっているんだ、あいつは。
「いやだって、こういうことはメールよりかは直接会って誘いたいじゃん」
せっかくのデートなんだし、と唇を尖らせる宗田は全く以て可愛くない。これが女子なら可愛いんだろうけれど、イケメンでも男は男だ。
「そんなんだからいつまでも誘えてないんじゃん。糸田、映画のこと自体忘れてるかもしれないぞ」
「え! まじで!?」
「可能性の話な。それを確かめるためにもちゃんと誘えよ」
忘れてるわけではないが、今は部活に夢中なのは確かだ。昼休みに話を聞いたところによれば、もうすぐ地区予選が始まるということだ。試合に向けて練習も佳境に入っているのだろう。疲れた顔をしつつも楽しそうだった。
宗田も俺と同じように糸田の様子を見ているはずなのだが、宗田には違うように見えているのかもしれない。
「うぅん、でもさぁ、今糸田、試合前で大変そうじゃん。なんか言い出しにくいんだよな…」
「試合始まったら余計言い出しにくくなるぞ。勝ち進んだらそれだけ忙しくなるんだし、昼休みだって一緒に食えなくなるかも」
そう言えば昨年の時も試合直前は昼休みも返上して自主練に励んでいたな、と思い返して助言してみれば、虚を突かれたように宗田は目を点にしていた。
1年の時はレギュラーでなくともサポートという名の強制参加だったようだが、去年はレギュラーに選ばれて自主練に積極的に参加していた。そして今年は引退試合のための自主練ということで、昨年に比べても気合の入れようは段違いだろう。
だから下手をすれば試合で負けるまで、放課後だけでなく昼休みさえ会うことが難しくなるのは明白だ。
昨年の糸田を知らない宗田は目に見えて焦りだした。
俺としてはメールなり直接会うなり、方法は何でも良かった。とりあえず宗田自身が糸田に話してくれなければ、俺としても話が前に進まないのだ。焦ってもらわなければ困る。
「それはヤバイな。分かった、今日にでも声をかけてみる。放課後、部活が終わるまで一緒に待っててくれるか」
「もちろん」
ようやく意を決した様子の宗田に、俺は心からの笑顔を向けた。
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