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愛すべき狼-1-
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それは青く晴れた昼下がりのこと。
「――えっ。……政宗くんが……風邪?」
いつもランチは恋人の政宗と一緒にとっていた半兵衛は、すこし長引いた講義が終わるや否や、すぐに食堂に向かった。互いに違う学部に所属しているため、キャンパス内ではなかなか会えない。だからこそ半兵衛はこの時間を大事にしたかった。それは政宗も同じ気持ちで、半兵衛が来る前には必ずと言っていいほど、先に来て彼を待つと言うのが日課になっていた。
そんなわけで、今日も待たしてしまい、申し訳ない気持ちでいっぱいになっていた半兵衛は、すこし駆け足になって先を急ぐ。大学に備え付けられているカフェテリア風のオシャレな食堂は、食欲をそそるとても良い匂いと腹を空かした学生でごった返していた。
辿り着いてすぐに、待たせているであろう恋人を探す。いつも座る場所は決まって一番奥の窓際の席。その部分は大抵空いている上に静かなので、半兵衛自身がそこがいいと政宗に言い、定位置に決まったのである。小走りで向かい、待っているであろう恋人の顔を探した。しかし、そこにお目当ての人物の姿はなく、一番奥とあってガラリとしている。
――まだ来ていないのか……。
そう思ったが、政宗が遅れるなんてことは一度もなかった。――なぜなら大体があちらが先に来て、席取りしつつ半兵衛を待ち、すこし経ってから小走りで向かってくる彼に笑みをこぼしながら迎える――というのが、いつもの流れなのだが、今日は違っていた。いつも待っていてくれる恋人の姿はどこにもない。
さすがに心配になった半兵衛はポケットから携帯を取り出して、政宗の携帯に電話する。自分よりも講義が長引いているのだろうか、それとも何か別の理由か、そうさまざまな予想を立てながら――。
5回のコールの後、ようやく出たかと思えば、それはよく聞く愛する彼の甘い低音ボイスではなく、それよりもっと低い聞き慣れない声だった。ドキリと心臓が跳ねる。
半兵衛は焦った。こんな時に自分は間違い電話をしてしまったのか……と。しかし、一旦耳を離して画面を確認しても、そこには“政宗”とちゃんと表示されている。では、この電話に出ている彼はいったい誰なのか、いろいろ疑問に思う中で思い切って聞いてみた。
「あの――、つかぬことをお聞きしますが、どちら様ですか?」
半兵衛の問いにすこし間があったが、その声の持ち主は納得したように答え始める。
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