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青山の新刊
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週に1~2回、浅黄は青山の家に行ってご飯を食べさせてもらっていた。
3時半ごろなので、遅い昼食と言うか、早い夕食と言うか、とにかく、プロ並みの腕前を持つ青山の料理を食べに行った。
ふだん、いい時でコンビニ弁当、ひどいときはカップラーメンとポテトチップスで済ませていると知って、青山はこの時だけは栄養を摂るようにと、野菜中心でしっかりと量を浅黄に食べさせた。
青山は、自分の手料理をおいしそうに食べている浅黄を見ているのも好きだった。
「明日、僕の新刊が出るんだ。
『潮の名残』っていうタイトルだよ。
なかなか、いいでしょ。
1冊、君にあげるよ。
どうせ読まないからいらないかな?」
「いらない」
義理でも欲しいと言ってくれると思っていたので、浅黄がそっけなく断るのを聞いて、青山は少し傷ついた。
「全然、本は読まないの?
僕の本ぐらい読んでくれてもいいんじゃない?
読んでみたら、面白いかもよ」
「そうかもね」
浅黄は全く興味なさそうに、食べながら青山の顔も見ずに返事した。
「じゃあ、今日仕事から帰ったらこれを読んで、あさって会ったときに、どこまで読んだか報告すること」
青山は自分の新刊を、浅黄の目の前に置いた。
「なんで読まないといけないんだよ?」
浅黄は顔をあげた。
夏休みの宿題に、面白くもなさそうな課題図書の読書感想文を出せと言われた小学生のように不満そうだった。
「君が知らない僕の一面を知ってもらいたいからだよ」
「知ってる青山さんで十分だよ」
「そんなに拒否されると傷つくな」
「わかったよ。
でも、いつ、読み始めるかわかんないよ」
「いいよ。
君の家に僕の本があるってだけでも満足だよ」
「じゃあ、読まなくてもいいじゃないか」
「浅黄」
青山が叱るように名前を呼ぶと、「読むよ」としぶしぶ本を手に取った。
その夜、浅黄は仕事から帰ると、気乗りがしないまま本を手にした。
「潮の名残」というタイトルは、見るからに眠気を誘いそうだった。
ビールを飲みながら読もうと思い、冷蔵庫に取りに行って戻ってきたら、全く読む気をなくしてしまった。
次に青山さんに会うのは明後日だから、明日読めばいいやと思い直し、本をテーブルの上に放り投げ、ビールを開けた。
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