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おしまい
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門に到着する直前に、1台の車が追い抜いてすぐに停まった。
運転席のドアが開き、運転手が降りて言った。
「どちらへ?」
「うちへ、帰るんだ。歩いて」
歩いてと付け加えることで、相手の同情を引くかもしれないと思った。
「旦那様が駅まで乗せて差し上げるとおっしゃっています。
後ろへどうぞ」
浅黄は遠慮なく乗り込んで、礼を言おうとルームランプが消える前に相手の顔を見た。
綾倉だった。
そう思った瞬間、車内が暗くなったと思ったら、運転手がドアを開けて、再び明るくなってすぐに暗さが戻った。
「なんだ?」
ぽかんと口を開け、じっと見つめていた浅黄を不審に思い、綾倉は聞いた。
「いや、ありがとう、ございます」
「君も、招待客の一人かい?」
「まさか。ウェイターだよ」
「ウェイター?大分、飲んでいるようだが」
「それで帰ることになった」
「当然だな」
浅黄は綾倉がパーティに来ていたことに気が付かなかった。
おそらく、彼が庭で飲んでいるうちに来たんだろう。
こんなことなら、綾倉との再会を避けて会社を辞めたのは馬鹿みたいだと思った。
「前に、どこかで会わなかったかな」
綾倉が聞いた。
「なに、そのベタな口説き文句」
浅黄は口が勝手にしゃべってると思った。
言った後に、ああ、会社で会ったっけと思いだした。
大きなあくびが出た。
車の心地よい振動が彼の眠気を誘った。
「眠ってもかまわない。駅に着いたら起こしてあげよう」
「よろしく。おやすみ、綾倉さん」
「おやすみ。君の名前は?」
浅黄は綾倉が自分の名前を知らないのを呆れたように、「何言ってんの? 浅黄でしょ」と教えた。
そのあと、すぐに眠りについた。
目を覚ますと、そこはホテルの一室だった。
広い部屋のあちこちに飾られた大きな花、
上品な壁紙、カーテンとベッドカバーとカーペットの色が統一されていた。
ベッドが2つあり、そのうちの1つに浅黄は寝ていて、同じベッドに綾倉がいた。
二人とも何も着ていなかった。
結局、こうなるんだ。
想像していたドラマの結末を見たようなつまらなさだった。
時計を見ると8時だった。
昨夜、車の中で寝込んでから、こうなるまでの記憶はなかった。
飲みすぎたのか、頭が痛かった。
面倒なことにならないうちに、さっさと帰ろうとベッドを出た。
「起きたのか」
浅黄は綾倉をちらりと見ただけで、何も言わずに背を向けた。
「随分、傲慢な態度だな」
どうせ、一晩だけだと思うと、どんな態度だってとれる。
浅黄は綾倉を無視して服を探した。
「何を探している?」
「着るもの」
「そこにある。ソファーの上だ」
浅黄はソファーのそばまで来た時、頭の中で何かがカチリと鳴った。
彼は急いで上着のポケットを探り、中から目的の物を見つけた。
確かに、新宿のマンションのカギだった。
浅黄は冷静になろうと努めた。
昨日、俺はこんなスーツは着ていない。
昨日までの俺が、新宿のマンションの鍵を持っているわけはない。
「昨日の夜、パーティの帰りに俺を拾ったんじゃないよね?」
服を着ながら、振り返って、綾倉に確認した。
「そんな夢を見たのか?」
「夢? 違う。
戻ったんだ」
「カギをなくしてたのか」
「カギだけじゃない。
すべて失くしてたんだ」
浅黄はうれしさのあまり、綾倉のいるベッドまで戻って、上半身を起こしていた綾倉を抱きしめた。
心の中で、「本物の綾倉さんだ!」と叫んでいた。
「熱でも上がっておかしくなったのか?」
「帰る」
戻ったなら、帰って本を読まなきゃ。
身体を離そうとした浅黄の腕を綾倉はつかんで、引き戻した。
「脱げ」
「今、着たばかりなのに」
「脱げ。2回、同じことを言わせるな」
浅黄はあきらめたように息を吐いて、シャツのボタンを外し始めた。
この程度の扱いなら、こっちの世界の方がいいと望んだのは自分だ。
それに、気持ち的には、綾倉さんとするのは久しぶりだし、本を読むより、こっちの方がいい。
すべてを脱ぐと、ベッドに戻り、綾倉に体を寄せた。
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