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「…何してんだよ。」
俺はびっくりしてドアの方を見ると、あいつがすごく怖い顔でこっちを見ていた。
「悠莉、社長が呼んでる。」
「え?父さんが?」
俺は手を引っ張られ、医務室から連れていかれた。
さっきまでの拓真さんとのやりとりを思い出し、少し気まずい気持ちになる。
ズンズンと廊下を進んで行くのはいいが、俺たちが歩いているのは、人気のない、父さんがいる方とは全く反対の廊下だ。
こいつは何も言わずにただ俺の手を引っ張る。
俺はさすがに不安になって、声をかけた。
「……ね、ねぇ。どこに行くの?と、父さんが呼んでるんじゃ、ぅわ!!」
___ドン!
俺は、突然立ち止まったこいつに肩を壁に押さえつけられ、いわゆる壁ドン状態になっていた。
でも、この雰囲気は全然胸キュンなんかじゃなく、俺は今にも殺されそうな目で見られている。
「ど、どうし、「昼ごはん食べてたんじゃないの?」
「え、ぁ、うん。お昼ごはん、食べてた…けど。」
「…じゃあ、さっきの、何。」
「さっきの…?」
こいつの顔がグッと近寄ってきて、あと数ミリで唇が触れてしまいそうなところで止まる。
「こういうこと、しようとしてたでしょ?」
俺はその強い眼光に目をそらすことができず、こいつの匂いに赤くなっているんだろう顔を隠すこともできず、ただただじっと見つめていた。
「…そんな顔して、結局誰でもいいんだ。」
「…は?」
「最近、昼休憩のあと戻ってくんのもギリギリだし、練習中も気抜けてるし、やる気あんのかよ。」
「な、急に何いって、」
「もう、デビュー目前なんだぞ?俺たちは遊びじゃねーんだよ。真剣にやれよ!」
突然話が変わり、冷たい目で俺に言葉を吐き捨てた。
こいつの言葉に無性に腹が立って、思わず言い返す。
「だからなんなんだよ突然!!俺はお前に言われたこと考えて、みんなに迷惑かけないように、無理しすぎないように練習してたんだよ!…なのになんだよそれ、真剣にやれって。ちゃんとやってるよ!!俺は、お前らみたいにずっと一緒にやってたわけじゃないから、ちょっとでも近づけるようにって、………っくそ!どけよ!!」
俺は話しているうちに、悔しくて涙がこぼれそうになって、俺の逃げ道を塞いでいるこいつの胸を押しのけて、来た道を走った。
走っている先に見えたトイレに入って、個室の中で俺は声を殺して泣いた。
「…ぅ、ふぇ…ッズ…な、んでぇ…」
あいつの言葉に、態度に、意味がわからなくて、悔しくて、悲しくて、ただただ涙が溢れた。
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