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59《祐樹side》
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田村さんの声に急いで駆け寄ると、さっきとは違う光景が目の前にあった。
「…ご、ごめ…なさ、ごめん、なさ、ぃ...ゃ…ごめ、ごめ、なさ…」
ただ体を震わせていたはずが、耳をふさぐ手はそのままに頭を左右に振りながら、ごめんなさいとひたすらにつぶやいている。
横にいる田村さんが必死に声をかけているが、それも届いている様子はない。
その姿に、いつもうるさいはずの拓人も呆然としている。
「…大丈夫だ。俺がいる。」
気が付くと、俺の体は勝手に動いて、震える体を抱きしめていた。
それを見ている田村さんや龍たちも驚いていたが、俺は手を放すことなく、力を込めた。
最初は腕の中で抵抗していたが、俺が声をかけ続けているとだんだんと声も震えも小さくなっていった。
その様子に、俺はこいつと出会った日の夜を思い出した。
その時も同じように何かに怯え、でも誰かに助けを求めて手を伸ばすことをしようとしなかった。
こんなにも震えているのに、消えてしまいそうなのに。
そんなことを思い出していると、意識を失くしたのか、突然カクンッと体の力が抜けた。
「悠莉くん!?」
「悠莉!?」
「「ゆうくん!?」」
4人は、俺の腕に抱きかかえられているこいつに声をかけた。
「…意識を失ってるだけだから大丈夫だ。」
俺は、顔を覗き込み呼吸を確認し、慌てている4人にそう伝えた。
「…そっか。…祐樹くん、申し訳ないけど、そのまま社長室まで悠莉くんのこと運んでくれるかな?」
田村さんの言葉に頷き、俺はもう一度目を閉じて動かないこいつを抱きかかえなおした。
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