アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
71
-
「……んぅ、…」
だんだんと瞼の向こうが明るくなり、朝が来たことを知る。
…今日はあの夢をみなかった。
一度パニックになって倒れてから、うなされては冷や汗をかいて起きていたけど、今日はまったくなかった。
むしろ、なんだか幸せな気分だ。
「…いよいよ、か…。」
そう、いよいよ、あと数時間後には、事務所にある大きなホールでのデビュー記者会見が始まる。
…そういえば、いつのまに自分の部屋に来たんだろう。
昨日は、途中でお肉を食べるのを止めて、大好きなマスカットを食べて、
「……、…あれ?」
そのあとの記憶がまったくない。
俺は自分自身にびっくりしながら、リビングへと降りていく。
「母さん、おはよう。」
「おはよう、悠莉。」
「…あれ?父さんは?」
いつも俺の向かいの席でコーヒーを飲んでいるはずの、父さんの姿がない。
「父さんなら、先に事務所に行ってるわよ?今日の会見のことで。」
「そっか。…あのさ、昨日って、」
俺が昨日のことを聞こうとすると、母さんがスリッパをパタパタと鳴らしながら駆け寄ってくる。
「頭、痛くない?体が怠いとか、」
「え、ど、どうしたの、母さん!」
突然の慌てぶりに俺は驚いた。
「昨日、悠莉が母さんのワイン飲んじゃったのよ。」
…あぁ、それでか。
母さんが慌てているのも、記憶がないのも、お酒を間違えて飲んでしまったのだとすると、合点がいく。
「大丈夫だよ!すっごい元気!」
返事をしない俺の顔を心配そうにのぞき込む母さんに、にっこりと笑って、返事をする。
母さんは、良かった。と安心したように笑い、キッチンへと戻っていった。
テーブルには、大好きな苺と生クリームが乗ったふわふわのホットケーキが用意されていて、俺はいただきますをすると、口いっぱいにほおばった。
朝食を食べ終わると、それぞれ支度をして、俺と母さんは健くんの車で事務所へと向かった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
72 / 78