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「……悠莉…」
ぽつりと俺の名前が呟かれる。
それだけでやっと落ち着いてきた鼓動が、また忙しなく動き出す。
「…これからは、そう呼ぶから、みんなみたいに。」
だからお前も。あいつは口早にそう言って、控室へと戻っていった。
俺は呆然としたまま、1人廊下に取り残される。
「…な、なまえ…」
あいつが、俺の名前を呼んだ。
あまりにも動揺している自分に、また動揺する。
…頬が熱い。
きっと今の俺は、見るに堪えない顔をしていると思う。
あいつには、ばれなかったかな。
すごい驚いたけど、うまく隠せてたはず。
いつもは何でもないフリをしていたけど、俺だけ名前を呼んでくれないの、本当は少し寂しかったんだ、普通に名前を呼ばれるみんなが羨ましかった。
多分、これからのことを考えて、俺たち2人だけがあいつ呼ばわりじゃだめだと思ったんだろう。
…それにしても、突然だ。
俺は、すーはーと深呼吸をした。
「………ゆ、…ゆう、………だめだ!こんなの無理!!」
熱すぎる頬を手のひらで冷ましながら、項垂れる。
自分があいつへの気持ちを自覚した日から、こんなこと、何度もやってる。
どうしてか、自分の頭の中でも呼べたためしがない。
いつも胸の中が何かでいっぱいになって、その何かがのどにも溢れ出してきて、俺の声の邪魔をする。
どうしよう、と頭を抱えていると、遠くから俺の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。
時計を確認すると、もう6分前を指していて、俺は急いでみんなのもとへと向かった。
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