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そんなこんなで七瀬さんがずっと一方的に話して、俺たち全員の飲み会は終わった。
七瀬美香とそのマネージャー佐藤春樹と監督と別れた彼らは家の方向がどうやら一緒らしい。藤原拓海はヨロヨロな陸と一緒に歩いているし、椿はちょっと離れたところに歩いており、相沢明弘は椿の斜め右後ろに歩いている状態。周りから見るとどうなんだろうこの歩くポジション。
はあー
疲れた。
でも、なんか楽しかったかも。
それに具合も悪くならなかったし。
案外飲み会っていうのは悪くはない。
なんて思いながら歩いていると
「つーばーきーーー」
「うわっ」
陸が思いっきり飛びついて抱きついてきたのだが、華奢な体をしている椿には十分に支える力が足りなかった。
結果的に倒れることになるはずだったが…
あれ?倒れない?
瞑っていた目をゆっくりと開けると
「気をつけてくださいよ、香川陸さん」
驚くことに、相沢明弘が支えてくれた。
触れられたところが少し熱を持っていて、一瞬心臓が高鳴る。
自分のことを嫌っているはずの彼が椿を助けるようなことなんてあり得ないと思っていたが、彼は心の底から優しいんだろう。嫌いな人でも怪我をするようなことは無視できない性格なんだと椿は解釈した。
「ありがとうございます。」
ペコっと体制を整えた後にすると
「ああ。」
と以外にも素直に返してくれた。そして彼と一瞬目があってすぐにそれは逸らされた。
その目はキレがあって、男でも惚れてしまうほど強い目をしている。
そのまま気まずい雰囲気になると思ったが、藤原さんが陸を支えながら椿に「大丈夫ですか?」って聞いてきた。
「はい、大丈夫です。」
「相沢男前!」
藤原が明るくグッジョブを相沢に向ける。相沢明弘はいつものノリかとため息をつく。
「それより、香川さんのことどうするんですか?」
相沢明弘は陸を指さしながら言った。
「俺、こいつを連れて帰るわ。」
藤原拓海はよいしょと彼を支える。
「えっそれって迷惑じゃないですか?俺が家まで陸を送ります。多分陸の鞄に鍵が入っているはず…」
「大丈夫!俺が送っていくよ。秋原さんは明日も仕事あるでしょ!」
「でも…」
「いいから!」
とか言っている彼は別に嫌そうではないので大丈夫だと判断をし、「ありがとうございます。」と礼を言って彼らを見送った。
陸を軽々しく持ち上げているから結構力あるんだな。
何気に着痩せしているタイプだったり…
あれ?そういえば今、相沢明弘と2人きり?
えっ…メチャクチャ気まずいかもとか思いながらも椿は「行きましょうか。」と頑張って切り出した。
トボトボ歩いていると相沢明弘が聞いてきた。
「秋原さん、秋原さんはどうして役者になったんですか?」
急に聞かれた言葉に言葉を詰まらせながらも返事をする。
「…えっと… 自分は昔から演技をする事だけには自信があったので…」
と若干彼と話をしていることに驚いていた。
あまり自分のことを正直には話さない椿だが、彼には正直に言った。普通だったら嘘を言っていただろう。
「じゃあ演技が得意なら、嘘をつくのが得意ですか?」
彼は椿の不意をついてきた。
でも椿は正直に答えられた。
「…はい。」
声が思ったよりも暗い夜に響いた。
自分でも人に正直に言うなんてありえなかった。絶対にそんなことは言わないのに…
「そうですか… すみません、でも秋原さんってわかりやすいですね。」
彼とは会話をしているが、若干壁がある。
多分彼が自分と話しているのは社交辞令だ。
「えっ?俺が分かりやすい?」
でもまさかそんなことを言われるとか思ってもみなかった。
いつも人にわかりずらいと言われてきた椿には衝撃的なことだった。それに相沢明弘が嘘を言っているようには見えない。
「はい。」
驚きの余韻に浸って歩いていると駅に着いた。
もう夜遅いのか、人があまりいない。
2人で同じ電車で一人席空けながら座る。
どうやら家が近いらしい。偶然にも同じ駅で椿の家から駅は五分、相沢明弘の家から駅へは八分程度だ。
「あの、間違ってたらあれですけど…」
と椿が言いずらさそうに視線を電車の広告に向ける。
「俺の事嫌いですよね。」
しばらく無言が続いていたので椿は自分の思っていたことはあっていたんだと納得した。それと同時にズキッと心が痛かった。
影では言われ慣れていても、はっきり言われるのには慣れていないからだろうと思った。
「俺、遊んでいる人とかが嫌いなんです。見てて気持ちが悪い。」
と相沢明弘が口を開いた。
「えっ?…俺が…遊んでいる…?」
それはとてもありえない内容だった。椿は人とは遊んだ記憶がないのだから。
むしろ関わることを避けてきた。
でもここで否定したって信じてくれない。
さっき俺は嘘が得意と言ってしまったのだから。
椿はそのまま違うともそうとも言えずただ黙っていると…
「でも何となくですけど、実際には遊んでいないですよね。」
椿は驚いて目を見開きながら彼を見た。
そして目が合う。
ガタンゴトン… ガタンゴトン…
この電車には2人しかいなく、2人とも周りの目を気にせず互いに目を合わせた。
改めて顔を見るとすごくかっこいい。
椿は驚きを隠せなかった。彼が椿は遊んでいないと、言ってくれた。
その一言だけでも救われた気がした。
最近椿の周りではみんなが噂をしていた。
「あの人は自分の体を使っている。」
「あの人は遊んでいるよ。」
「あの人そっち系かもよ。だって男とも寝れるらしいよ。」
とか全く見に覚えがないことを噂されていたのだから。
もちろん嫌がらせなど、妬みなど、男からの告白も多かったから。
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