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そっか。
でも椿は決して心を許しちゃいけないと思いながら壁を作りながら話を続ける。
「どうもありがとうございます。俺はそういう噂をされても全然気にしませんから。仕事には支障を出さないので今後ともよろしくお願いします。」
わざと堅苦しい言い方をしながら彼にニコッと笑ってみせた。
もしかしたらうまく笑えなかったかもしれない。
でも椿は懸命に笑いかけた。
彼も気遣ってくれたのかこれ以上2人は何も話さず同じ駅から少し歩いて別の方向へ別れて家へ帰った。
椿は人と壁を作る。
それは自分の中に入ってきてほしくなくて。近づいて仲良くなれば、他の人に傷つけられて、失うのが怖い。
普通だったらそう簡単には何かを失わないだろう。
でも椿には事情があり、それが椿の大切なものをいとも簡単に奪ってしまうのだ。
同時にトラウマともなっている。
だから友達も表向きだけ。
仕事も自分の役目を果たすだけ。
椿はただひたすら誰かを傷付けないように生きていくだけの人生だとそう自分で割り切っている。
椿は優しすぎる性格で自分自身を傷付けてまでも他人を幸せにしようとする。
それが、俺の役目。
1人家に帰りしばらくソファーの下でもたれかかってしゃがみこむ。
「今は仕事をしっかりこなさないとな」
と気分を取り替えて明日の撮影のためお風呂を入って寝た。
ー次の朝ー
だるい。
暑いし喉が渇いてる。
体に重たい石が乗っかっているかのようなだるさを感じつつ、椿は体を起こした。
このだるさの原因は疲れなのかもどうかも原因がわからなく、とりあえず水を飲み着替える。
今日はもう食欲がなくて食べられないな。
そんな椿はいつもより遅く撮影場所に着いた。
「…遅れて、すみません」
「いや秋原くん遅れていないから!!!ていうかいつも早いだけだよ。でも凄いよね、そういう風に早く来て準備をするのは!なかなかこういうことが難しいんだよ。」
と山田監督が言ってくれた。
「はい、ありがとうございます。」
じゃあつまりはセーフってことか。
いつも相沢明弘と七海美香よりも早くきていた椿だったが、今日は2人よりも来るのが遅くなってしまった。
本当にだるい。
片手で額を触って確認してから自分のだるさを無視して撮影を始める。
「じゃあいくよー 2人、草原大河と長倉陽が喧嘩をするところから。
3 2 1 Action!」
__________________________________
「お前は彼女のことが好きなんだろ!」
相沢明弘が草原大河役として演じる。
「そうだよ。でもお前もじゃん!知ってるよ、2人が俺の知らないところで付き合っているのも!それを隠しているのは俺に対する同情?それとも取られるかもしれないという怖さ?なんで正直気に言わないんだよ!」
冷静さを失った長倉陽を演じる。
「っ!それはお前が彼女のことを好きなのをわかっていて付き合うことができなかったからだよ。でもどうしても好きで付き合うことにしたけど、お前を傷付けたくはなかった!」
「… それでもお前に隠し事を作られたくはなかった。」
「…っ悪い。」
「謝んなよ!バーーーーーカ!」
と言って思いっきり教室のドアを閉めた。
「…」
っと演技をしたところで終了。
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「はい カット! いや〜秋原くんのバーカは心に響いたよ。あの一言にはいろんな思いがこもっていたね。悲しい気持ち、バカバカしくなった気持ち、悔しさで意地になった気持ち、怒りの気持ちとかね!」
と監督に心に響いたと言われてほっとしていた。
「ありがとうございます…」
なぜならもう椿は体力の限界だったからだ。
立っているだけで精一杯だ。
今日は朝から具合が悪く、だんだんもっと体調が悪くなってきた椿だった。
「じゃあ今日はここまでお疲れー」
「先に失礼…します。」
「はーい」
もう歩いているのが精一杯で、これ以上無理をすると倒れるのが自分でもわかっていた。
息も結構上がっているし、前はクラクラするし、体が石みたいに重いし…
「…秋原さん!」
といきなり焦った声で話しかけられてびっくりしながらも平然を保ちながら後ろを振り返る。
後ろを振り返って誰が自分を呼んだのか理解した瞬間、目を見開いた。
「…っ大丈夫ですか?体調が良くなさそうですよね。」
相沢明弘が息を早くしながらこっちを見ているので、走ってそれを言いにきてくれたのかと思った。
「えっ」
廊下で明らかに呆然と立ち尽くしている俺と深く息をしている彼。
何かを言おうかと思ったけどこれ以上関わってはいけないと冷たく返す。
「全然…大丈夫です。それを言いにきてくれたんですか?ありがとうございます…仕事に支障は出しませんので。」
「…はい、でも明らかに熱がありそうですよ。」
と言いながら椿を強く見る。
「優しいんですね。嫌いな俺にまでもそんな風に心配をするなんて…」
「…別に優しくはないですよ。」
椿はもう限界だったのでじゃあと言って歩き出す。
「途中まで一緒に行きます。」
と言われても同じ方向なので断れるわけがなく、仕方がなく歩き出した。
しばらく無理をして歩いたが容体がさっきよりひどくなってきた。
息も上がっている。
「っ…」
ぐらっと前に倒れたと思ったら相沢明弘が支えてくれたのか最後に覚えているのは久し振りに感じる誰かの温もり。
なぜか彼の匂いがひどく椿を安心させた。
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