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相沢明弘さん…
ドキン
ドキンッ…
椿の中で脈が早く、強く打つ。
今は夜だったから良かったものの、椿の顔が真っ赤だろう。
だめだ。これ以上考えたら後戻りできなくなる。
あまり近づいちゃだめだ…
それに相沢明弘は七瀬美香が狙っていると思う。
普通の恋愛は男女がするもの。
自分はもともと普通だが彼に惚れてしまったんだと自覚してしまった…
椿は自分に大切なものができるのを一番恐れている。
大切なものができて、それを奪われることが何よりも嫌だ。
同時に悲しさが溢れてくる。
涙が視界を滲ませて椿は相沢明弘を好きだと自覚したこと自体に何の抵抗もなかった。
相手は男性なのに…
涙をぐっとこらえて携帯を手に取った。
プルルル… プルルル…
『はい。えっ…つ、椿さんどうしたんですか?』
「光岡さん。お願いが…あるんです。」
彼も椿が真剣だとわかったのか名前の呼び方を訂正しなかった。
『はい。なんですか?』
と椿が言いやすいように優しく言う。
「相沢さんの前では…恋人のふりをしてくれませんか?」
『えっ…まっ…それ…本気で言っているんですか?』
といつもよりも真剣で迫力ある声で聞いてきた。
椿は相沢明弘には気持ちを伝えないと覚悟を決めて、光岡隼人に見えるはずもないのにゆっくりと頷いた。
光岡隼人はなぜかそれをわかったのか『良いですよ。』と言ってくれた。
「すみません…」と言うと相手は
「俺は椿さんのことが好きなんです。これは本気で。だから俺にしたら幸運のラッキーチャンスですよ!」と明るく話してくれる。
そのことに椿は心が少し痛んだ。自分は彼を利用しているんじゃないかと。
『椿さん言っておきますけど俺は相沢明弘を利用してあなたを俺のものにしますよ。そしてあなたは俺を利用しているわけじゃない。全ては自分に都合がいいんです。』と心を見透かしたように言ってくれるのはきっと彼の優しさだ。
『あと、椿さん…ひとつお願いがあります。俺たち仮にも恋人の演技をするなら敬語無しにしませんか? で俺はあなたのことを呼び捨てしたいんです。』
「…いいですよ。」
と椿は了承する… これで自分の気持ちがこれ以上大きくならないことを願いながら…
『じゃあ俺のことも隼人でいいですよ。』
「は、隼人さんでいいですか?」
『うん。ええよ。じゃあ今からでも敬語を無しにせなあかんな!』
「変なの… 」と言いつつも彼に励まされた気持ちになった。
『椿。俺はお前のこと好きやからそれだけはちゃんと覚えといて。』
敬語を使わない彼は関西弁を喋っていてそれが不思議だった。
「はい。」
と最後の確認のように静かに椿は返事した。
正直言って相沢明弘に対して嘘をつくのはとても嫌だ。
人は時に大切だったり好きな人を守るためにその気持ちを隠して嘘をつく必要があるときもあると椿は知っている。
相沢さん。あなたが好きですと心の中できっと最初の最後の告白だと思いながら椿は囁いた。
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