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端っこに一人ポツンと周りを眺めている椿を誰も話しかけようとしない。
それは椿が人形のように綺麗で近寄りがたい雰囲気だからだ。
中には男で色目を使って見ているものも沢山いる。
その視線が怖い。
でもその視線から逃れられるわけもなく、椿はただ突っ立って携帯を見ているだけだった。
「ヤッホー椿。」とブラックな笑顔でいきなり現れた要を無視して携帯を見る。
「ねえ、そんなに俺のこと嫌い?可愛くないね。ほんと。まあ俺のせいだけどねー。ていうかさぁ、なに無視してんの?お前生意気すぎ。椿のくせに…」
「じゃあ…あなたと何を話せば良いんですか。」
「うーん、そうだね。 確かにないね。」
「ですよね。」
「あっでも一つ言わせてもらうけど俺、明弘さんを気に入っちゃった。良いよね別に?」
やっぱりと思うと同時にズキンと鈍い痛みが心臓を貫く。
「俺に聞かないでください。」と強く言ってムキになってしまった。
それを見た要は「あ、もしかして好きなの?」とか聞いてきたからさらにムカついた。
「そんなわけないです。」
「嘘つき。」
椿は最悪だと要を睨む。
「じゃあ奪っても良いよね? あ、ていうか付き合っていないか!」
とクスッと笑っている要を見てイライラする。
昔から要は自分の権力を使って、自分の体を使って生きてきた人間だ。
けどそれは仕方がない事で椿は別の意味で要を自分とは遠ざけたかった。
「あっ、明弘さん!」
要は相沢明弘を見つけて笑顔で行く。
名前を簡単にそう呼ぶことができる彼を本当はどこか羨ましく思う。
「ああ、そうですね。」と相沢明弘が要の言葉に返事をしていて、要とうまく会話ができていることにも嫌気を感じる。
悔しい気持ちがどこかにあって、それで軽く唇を噛む。
痛みが普通の人よりも感じるから本当はすごく痛い。
けどこうでもしていないと気が楽じゃなかった。
「椿さん」と読んでくれるのはこのパーティーの間だけで自分が彼を明弘と呼べるのも今の間だけ…
そんなことをいくら考えても自分が虚しくなるだけなのにと椿は分かっている…
「椿さん、疲れたんですか?」
相沢さんに名前を呼ばれて驚く。
「えっ、…い、いや…」
「なんかぼーっとしていたので。」
「まあそりゃ疲れるでしょ!」
要が間に入って会話をする。
そのことに目線を下に移したら相沢の視線を感じた。
「椿さん…口から血が…」
急に手が口に触れられてさっき噛んだところから出ていた血を拭ってくれた。
かあぁぁ…
急にそんなことをされてびっくりしたけど、それよりも恥ずかしくて顔が真っ赤になる。
「だ、大丈夫、です…」
目を逸らし少し後ろに下がる。
そんな椿の様子に驚いた要はしばらく固まっていた。
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