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陸は椿が寝ているドアのところまで早足でくる。
そしたら春日が藤原と一緒に来た。
「陸、藤原さんは君の大切な人だってことは何となくわかっているから、陸がまた混乱しないようにさ。」一緒にいてもらって…そう言おうとしたのがわかる。
春日は陸のこともちゃんと知っている。だから陸がまた混乱しないように拓海さんに陸のそばにいてくれと言ったんだろう。
「…うん、ありがとう。」
「この人なら陸を支えることができるってなんとなくわかるよ。じゃ、藤原さん。あとはよろしく。」
「ああ、ありがとう。」
「拓海…ごめん。迷惑かけて。」
「んなわけあるか。陸、お前が俺に甘えてくれたり頼ってくれるのが一番嬉しいんだよ。」
藤原は笑いながら陸の頭を撫でる。
「うん、ありがとう。」
陸は椿の部屋へそっと入って落ち着かせるように息を吸う。
大丈夫。椿は大丈夫、大丈夫。
「椿っ…」
と言いながら駆け寄って手を握る。
拓海がいるおかげでよっぽどましだ。
「秋原さん…っ…」
拓海も様子は聞いていたけど息が弱い椿を見てひどくつらそうな顔をした。
「拓海…椿は体が弱いんだよ。だから椿は1日最低三回までしか仕事をしちゃダメ。無理をさせちゃダメなんだ…」
「…そうか…陸、一人きりになりたいだろ、部屋の外で待ってるよ。だから安心して。」
拓海が心強いことを言ってくれるから陸も頷く。
部屋に眠っている椿と二人になった陸は涙を流す。
まだ苦しそうで自力で息をするのも無理だ。
陸があの時探しに言ったから良かったものの、もう少しで命を落とすところだった。
「秋原…せい、や…」
陸は怒りを込めながら目をつむってその名を言う。
「っ…、!」
椿が苦しそうにしているのを見ていることだけしかできない。
部屋にはピーッピーッと一定の無機質な音が続いてその音が小さい頃に両親を亡くした記憶を思い出す。
何度も椿が危険な状態にあっているのは知っているけど実際にその様子を見たことがなかった。
なぜなら医者が見せないようにしていたからだ。陸に見せるとパニックになってしまうことがわかっていたから。
でもいまはもう大人で支えてくれる人がいるからと椿のそばにいられる。
陸はしゃがんで椿の手を強くも優しく握った。
こんな時でも椿は綺麗で美しい。
「大丈夫…椿は大丈夫。」
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