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シエルはこそこそと周囲に視線を配らせながら市場へ向かった。
最近何かネットリとした視線を感じるのだ。
夜中に出歩きさえしない限り人攫い屋には捕まらないとは分かってはいるのだが、それでもこの気味の悪い視線は気分が悪い。
「すみません。お肉ください」
「はいよ!いつもありがとうね、お嬢ちゃん」
とても綺麗な容姿をしているシエルは頻繁に女性と間違われるが、嫌な気分ではなく悲しくなってしまうのだ。
(いっそ女だったらいいのに……。)
2年前に出会ったアルベールのことが忘れられないまま、結局あれから一度も会えていなかった。
あの美しい少年はどこで暮らしているのだろうか。
もう会えないのだろうか。
自分が女であったら、アルベールともう一度出会って、恋というものを始められたのではないか。
そう思いながらもシエルはさっさと買い出しを済ませ、宿に戻った。
「おじさま、ただいま戻りました」
扉を開けて帰宅を知らせるが、宿の中からは返事がなく、どうしたのかと思ってシエルが一歩踏み出そうとした瞬間、
「んんっ!!?んーっ!!!んんんーー!!!」
何者かに後ろから睡眠薬を染み込ませたハンカチで鼻と口を塞がれ、抵抗しようとしたがシエルはフッと意識を飛ばした。
「悪いな、ナヴィ……」
意識を失う寸前に見えたのは、ニヤリとほくそ笑む宿のオーナーの姿だった。
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