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とても幸せな夢を見た。
大好きな人が目の前で微笑んで、
大好きな声で僕の名前を呼び、
そして優しく僕を抱きしめて、
慈しむように唇にキスを落とす。
「ア……ル………様………」
陽の光を浴びて、仕方なく目を覚ます。
夢だとわかっていても覚めたくなかった。
ずっとあの夢の中に居たかった。
シエルはむくりと立ち上がり、ベッド横に置いてあるスリッパを履いて部屋を出た。
廊下は長く、やはりお城の中はどこも迷路のようであるが、少し歩き慣れた通路を歩いて広間へ向かった。
エルヴィドに攫われてから、一週間は経っただろうか。
シエルはよくアルベールのことを考えるようになった。
時々鎮静効果のある注射をしてもらったり、エルヴィドに抱かれたりしながら、少しずつ薬の依存症は治まり、禁断症状も出なくなってきている。
けれどシエルの素直な身体はアルベールの熱を欲していて、毎日窓の外を見つめては、アルベールが迎えに来るのを待っていた。
「シエル、今日も迎えを待っているの?」
「エル………」
広間の扉の前にある大きな窓から外を見つめていると、後ろからエルヴィドがコートを掛けてくれた。
「俺のところにいた方が幸せになれるよ」
「うん。分かってます。それでも、僕………」
愛してくれて、自由もくれて、美味しい食事だって、温かいお風呂だって、手触りのいい衣服や寝床だって与えられている。
セックスはまるで恋人にするような優しい愛撫で、トロトロに気持ち良くしてくれる。
エルヴィドのところにいた方が幸せなんて、どう考えたって分かりきっていることだ。
シエルもそれを分かっている。
だけど、それでもやっぱり、これがアルベールだったら。
そう考えてしまうのだ。
アルベールと一緒にいれるなら、手足を繋がれることも、まともな食事をもらえないことも、裸で放置されたって、冷たく硬いベッドに寝かされたって、乱暴なセックスをされたって幸せなのだ。
シエルはアルベール=ヴィクトリアという男を、全てを捧げてもいいと思うほどに愛している。
「ご飯、冷める前にはおいでよ」
エルヴィドはペリグレットがある方角をじっと見続けるシエルに声をかけて、広間へ続く扉の奥へと消えた。
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