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14年前、ティエンヌの王宮。
俺がまだ6歳の頃。
そしてシエルが生まれる数日前の話だ。
メジエールの国王と王妃が直々にティエンヌへ訪れたのだ。
なんでも父さんはメジエール国王と旧友らしく、メジエールの王と王妃の子がもうすぐ生まれるから祝おうという、父さんの突然の提案だったらしい。
相手方は快く承諾してくれ、今こうやってこちらの城まで来てくれたと言うわけだ。
当時まだ6歳で人見知りだった俺は自室にこもろうとしていたが、父さんに引っ張り出されて一階のホールへと連れられた。
「あら?あなたがエルヴィド君?」
「……っ!!」
突然後ろから声をかけられ、驚いてビクッと跳ねると、声をかけてきた女性は可笑しそうにクスクスと笑った。
振り返るとそこには、優しい雰囲気の、とても美しい女性が立っていた。
「驚かせてしまってごめんなさい。私はメジエール王妃のマリア=ランベリクです。君はクライトマン皇帝の息子さんよね?」
暫く見惚れて固まっていた俺に、マリアさんは首を傾げ、俺はとっさに頷いた。
マリアさんはニコッと微笑んで、俺と同じ目線になるようにしゃがみこんで話をしてくれた。
その時間が楽しくて楽しくて、生まれてすぐ母親を亡くした俺にとっては、お母さんがいるとこんな感じなのかと感動したのを覚えている。
「マリア!そんな姿勢だと体に負担がかかるだろう!こっちに座りなさい」
「あなた……。大丈夫よ、今エルヴィド君とお話ししてただけ」
「ああ、そうだったのか。二人ともこちらにきて話しなさい。もうすぐ生まれるんだから……」
血相を変えて駆け寄ってきたランベリク王に、マリアさんは苦笑しながら俺に手を差し伸べた。
マリアさんのお腹は大きく膨らんでいて、俺は思わずお腹に触れた。
「赤ちゃん……?」
「そうよ。もうすぐ生まれるの。名前はね、シエル……。シエル=ランベリクよ」
「女の子?」
「いいえ、男の子よ。必然的に跡取りになっちゃうし、大変な思いをさせてしまうかもしれないわね……。」
そう呟くマリアさんの表情はどことなく悲しそうに見えた。
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